クライアントワークのプロフェッショナルとして出来ること

以前、Artisan Edgeが取るポジションとして、クライアントワークとメーカーの2つがあることを書きました。

比較的大きな仕事ができるクライアントワーク(もちろん生活の維持という目的もあります)と、最初から最後までを自分でやってしまうメーカーポジションのモノづくりの両方をやっていくこと。これはArtisan Edgeとして、私がやりたいことでもあります。

クライアントワークというのは、いわゆる請負や準委任での仕事です。クライアントから受けた仕事をやるということで、自ら考え出したモノを自らの責任でつくるというメーカーポジションの仕事と対比できます。

私の10年以上の仕事としてのエンジニア経験は、すべてクライアントワークです。
今日は、クライアントワークをやる際の自分のポリシーというか、仕事についての考え方について書いてみようと思います。クライアントワークにおいては、その仕事ぶりがいかに素晴らしかったとしても、私は脇役であるべきだと考えています。プロジェクトの中でどんなに大きな役割を占めたとしても脇役です。少なくとも主役になってはいけません。

それは、クライアント自身が主役に立たないといけないからです。

仕事の成果は、私以上にクライアント自身が深く関わることになるのです。出来上がったシステムを使うのはクライアント自身ですし、そのシステムからメリットを享受するのもクライアントです。極めて当たり前のことなのですが、そのことを忘れてはなりません。

時折、システムで何かをやりたいけれど(やれと経営層から言われているけれど)、何をやったら良いかイメージが沸いていないクライアント(の担当者)と仕事をすることがあります。
クライアントが経営者自身であったり、何らかの団体の代表者であっても、そういうことがあります。

そうした場合、私に出来ることはイメージそのものを作ることではありません。もしかしたら出来るかもしれないけれど、やれば良いというものではありません。
本当にクライアント自身にイメージが沸いていないのなら、手助けをすることは出来ます。私の仕事はITですから、類似のシステムでの事例紹介だったり、関係する最新のIT動向、さらにセオリーは何なのかといった話なら出来ることがあります。

外部要員としてプロジェクトに参加するエンジニアに求められるのは、そういうことなんだろうと思います。外部要因だからこそ、類似システムの構築を実際に経験しているのです。最新のIT動向やセオリーの勉強に対するモチベーションも、外部要員の方が強いのではないかと思います。

私自身としてはそういう手助けをしながら、最終的にはクライアント自身がプロジェクトの成功に熱意を持ち、誰よりも深く知っているという状態を作ることを目指します。
その上で、構築を任せられたら、エンジニアとしてきちんとしたものを作ります。その場面では主役に立ちます。

これからのエンジニアが、ITとビジネスの両面を深く知らなければならないことは間違いありません。
両方を知っているからこそ、ある場面では主役に立って仕事を進め、別の場面では脇役に回って後方支援する、といった仕事が出来るのではないでしょうか。
それが、クライアントワークにおいてプロフェッショナルとしての振る舞いではないかと思うのです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。