小さな企業・団体がWordPressでビジネスサイトを作るときに「構築作業前に」考えること

Artisan Edgeのサイトは、ビジネスサイト、ブログともにWordPressで出来ています。
ある団体のサイト構築の相談を受けた際も、WordPressでやりたいという話でしたし、こちらからもWordPressを提案しました。

ビジネスサイトの構築で使用するCMSとして、日本ではまだMovableTypeを使うことも多いようですが、WordPressを使うケースも増えてきているように思います。

今回は、WordPressでビジネスサイトを作るときに考えることのうち、「構築作業前に」考えておきたいことを紹介しようと思います。

コンセプトワーク

最初にやるべきことはサイトのコンセプトをまとめることです。何のためにサイトを作るのかを、誰に見てもらうのか、見てもらった後にどうして欲しいのかといった視点で整理しておきます。これは、サイト構築を誰かに依頼するときに重要になるのはもちろん、自分で作る場合でも大切です。

サイト構築の相談を受けた際に私が必ず聞くのは、「このサイトを作ることで、何を変えたいのでしょうか?」ということです。これは、何度も考えるべきだし、考えがまとまったら文書にしておくことをお勧めします。サイトを構築していく過程で、何のためにやっているのだろう?という原点に立ち返った疑問が湧いてくることがあるのですが、その際に文書化されたコンセプトがあると、「そうか、そのために作るんだったな」と思い出して、コンセプトに沿ったサイト構築を継続することが出来ます。

見せたいコンテンツを洗い出し、2つのタイプに分ける

コンセプトワークの成果を元に、コンテンツリストを作成します。この時点でページ遷移などを事細かに決める必要はないと思いますが、少なくとも、どういうコンテンツを盛り込むのかは決めておくべきです。また、グループでサイトを運営する場合は、そのコンテンツを誰がどういう間隔で作って行くのかを決めておいた方が良いでしょう。コンテンツの作成、更新は面倒な作業なので、誰がやるのかという運用イメージを作っておかないと、枠はあるけど中身がないということになってしまいます。

また、WordPressで作るという視点では、コンテンツを下記の2つのタイプに分類する必要があります。

  • コンテンツが都度増えていくもの(ニュース、ブログ、商品情報など)
  • 一度作ると滅多に更新しないコンテンツ(概要、問い合わせページなど)

WordPressで作成出来るコンテンツは、投稿と固定ページの2種類です。都度増えていくコンテンツは投稿、一度作ると滅多に更新しないコンテンツは固定ページというのが基本です。

原則としてブログ毎に投稿は1系統しか作れないという制限があります。そのため、ニュースの他に社長ブログのようなものも作りたいとすると、1系統の投稿の中でカテゴリ(例:ニュースカテゴリと社長ブログカテゴリ)として分ける方法と、WordPressのマルチサイト機能を使ってメインサイトのブログはニュース用に使い、社長ブログは別サイトにするという方法があります。(カスタム投稿タイプを使うと1つのブログで複数系統の投稿を使用できます。カスタム投稿タイプはテーマに強く依存するので、カスタム投稿タイプを使うことを前提にしたテーマを使うか、オリジナルテーマを開発する必要があります。)

WordPressのマルチサイト機能は、1つのWordPressのインストールで複数のブログを作成出来るというものです。プラグインやテーマをサイト内の複数のブログで共通管理できます。ただ、投稿や固定ページをブログ間で移動させるようなことは出来ません。

今回の例では、社長ブログをどの程度本気でやるかがポイントになるでしょう。本気でやるならマルチサイト機能を使って別のブログとして運営した方が良いと思います。例えば、パーマリンク構造は1つのブログで1つしか定義できません。メインサイトに適したパーマリンク構造と、社長ブログに適したパーマリンク構造が必ずしも一致するとは限らないので、別のブログとして、別のパーマリンク構造を設定した方が良いでしょう。

WordPressのブログは、基本的に時系列で表示することを目的にしています。ニュースなどは時系列で良いのですが、商品情報などは時系列が適しているとは限りません。その場合は、WordPressのカスタム投稿タイプの使用とオリジナルテーマの開発を検討する必要があります。

テーマを探す?オリジナルを作る?

WordPressで全体の見た目を決めるのはテーマです。企業・団体の個性をサイトで表現するために、テーマをどうするかは慎重に考えたいものです。

WordPressには豊富なテーマが提供されています。国内でも多数ありますし、海外も入れるとその数は膨大です。
デザイン的に優れたものも多いですし、オリジナルテーマを作成するのはなかなか大変なので、小さな企業や団体であれば、既存テーマから適したものを探すと良いでしょう。

テーマを探す際は、WordPressの管理画面から「テーマ>新規追加」で表示されるテーマのインストール画面で検索するのがお勧めです。見た目だけではなく、テーマの機能でも検索できますし、気になるテーマがあればすぐにインストールして試すことが出来ます。

ただ、基本的に既存テーマはいわゆるブログを作ることが前提になっているので、ビジネスサイトには適さないことが多いのです。そのため、既存テーマではせっかく考えたコンセプトやコンテンツリストを実現できないことが多いのも事実です。
ビジネスサイト用のテーマもありますので、それを使うという方法もありますが、コンセプトやコンテンツリストにピッタリのものを見つけるのは至難の業です。発想を転換して、コンテンツリストを既存テーマに合わせてしまうという方法もあります。出来の良いビジネスサイト用テーマは、ある意味でビジネスサイトのフレームワークのようになっているので、そのフレームワークに沿ってコンテンツを埋めていくことで、そこそこ質の高いビジネスサイトをスピーディに作ってしまうのです。
例えば、Theme Forestで販売されているovumを使うと、セールスポイントを的確に配置したフロントページ、ニュース、ポートフォリオ、ブログ、お問い合わせといったコンテンツが揃ったビジネスサイトを作成出来ます。

どうしても既存テーマでは無理と分かったら、オリジナルテーマの開発を始めることになります。テーマを作るための解説書はいろいろと出ていますが、技術的な素養がないとなかなか難しいのも事実です。お金を出して業者に依頼した方が良いかもしれません。

独自ドメインを取る、パーマリンクを決める

ビジネスサイトを作る以上は、どうしても独自ドメインが必要でしょう。レンタルサーバなどで提供されているドメインでもサイトを作ることは出来ますが、やはり信頼されません。comドメインやnetドメインなら年額1,000円未満で取れますし、jpドメインでも3,000円程度です。ここは、さっさとドメインを取ってしまうことをお勧めします。
ちなみに、infoドメインは業者によっては380円とかで取れるのですが、SPAM業者が使っていることが多いこともあり、com/net/jpと比べると少し信頼性が落ちるというのが私の印象です。

続いてパーマリンクを決めます。WordPressでは固定ページは結構柔軟にURLを決めることが出来るのですが、ブログを使う場合はパーマリンクの設定でURLが決まります。
実際のところ、パーマリンクは後で変えさえしなければ良いような気がするのですが、SEOの視点では「?p=123」のような形式は望ましくないことと、パーマリンクの最後を「.html」にして静的ページのように見せることが良いと伝統的に言われています。

また、WordPressでは投稿名を使うとブログのタイトルがそのままURLになるので、日本語が入ったパーマリンクになってしまうという問題があります。投稿名はブログの投稿時に変更してタイトルとは別の文字列にすることが出来るのですが、意外と面倒だったりするのも事実です。
Artisan Edgeのサイトでは、ビジネスサイト側は更新頻度がそれほど高くないこともあり、投稿名をきちんと設定することを前提に、パーマリンクに投稿名を入れています。一方、更新頻度が多いブログ(別サイトとして運営しているこのブログ)は、投稿した年月日時分秒を使うことで投稿名を使わなくても一意にできるパーマリンクにしています。

ちなみに、ブログを使ったコンテンツで、カテゴリでニュースや商品情報を分けている場合、例えばニュースページのURLが「http://foo.bar.com/category/news/」のようになります。ビジネスサイトの場合は「http://foo.bar.com/news/」のようなURLの方がすっきりして良いでしょう。その際は、WP No Category Baseプラグインを使用すると、すっきりしたURLを実現出来ます。

あとは構築

ここまで進めば、あとは実際の構築作業です。
構築作業前に考えるべきことをしっかり考えて、良いサイトを躊躇なく構築出来るようにしたいものです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。