デブサミ2013 タブレット進化論

先週の木〜金曜日に行われたデブサミ2013。2日間とも見に行くことが出来たのですが、その最後に見たのが、ITジャーナリストの星暁雄氏による「タブレット進化論」でした。

私の今年のデブサミに対して掲げた目的は、スマートデバイス向けアプリの開発技術や使用事例を知るということでした。ちょうど、そういう仕事をしているものですから・・・。
今年は全般的にスマートデバイスに関するセッションが多くて、「モバイルファースト」という言葉もあちこちで聞こえたので、時代の流れとしてスマートデバイスに注目が集まっているのは間違いないのですね。

時代の変遷


AS 400 / cocoate.com

1991年 IBMが赤字転落 →汎用機などのエンタープライズからPCの時代へ
2013年 MicrosoftやIntelの不調、DELLのMBO →PCからスマートデバイスの時代へ?

汎用機→PC→スマートデバイスというのが時代の流れ。
1991年にはその時代の代表的企業であるIBMが初の赤字となったように、昨年から今年にかけては、PC時代の旗頭であったMicrosoftとIntel(いわゆるWintel)が不調、今年はWintel時代にPCを売りまくったDellがMBOによる経営再建を図るといった事象が、次の時代への移り変わりを物語っているのではないかという読みです。(ちなみに、IBMはその後ハードウェア事業を切り捨ててITサービスに集中することで復活しました。)

導入ベースでは、PCが前回で15億台なのに対して、スマートデバイスも既に15億台と肩を並べました。
今後はPCは微減、スマートデバイスは増加が予想されていますので、これからのアプリ開発はまずモバイルを考える「モバイルファースト」が常識になってくるのではないかと思います。


Windows 95 launch memorabilia / Marcin Wichary

私の社会人経験を振り返ると、私が社会人になった2000年時点では既にPCの時代でしたが、私が勤務した会社は歴史が長いこともあって汎用機のエンジニアが非常に多く残っていました。その中で(VisualBasic等のクラサバではなく)特にWebに強かった私は重宝され、若いうちに多くの案件に携わり、リーダー経験も豊富に積むことが出来たのです。

それと同じことが、これから(もう既に?)起きるのではないかと思います。つまり、PCにしか対応できないエンジニアが不遇をかこい、スマートデバイスに対応できるエンジニアに案件が集まるといったことです。(さらに、スマートデバイス+クラウドだと思いますが。)

iOSかAndroidか?

数の上では既にAndroidがiOSを上回っています。今後の展望としても、スマートデバイスの導入台数が今後15億台から20億台、30億台と増やしていくことを考えると、どうしてもデバイスを低価格化して途上国ユーザを開拓する必要があり、Androidが有利ではないかという話でした。

とはいえiOSも強いという話で、今後は廉価版のiPhoneやiPadの登場が待たれるというところでしょう。

スマートデバイスの法人導入

スマートデバイスのエンタープライズ用途については、私が最も興味を持っているところです。

星氏によれば、スマートデバイスはバックヤードではなく、フロントヤード。特に工事現場や手術室といったPCが使えない現場で注目されているといいます。

法人導入を失敗しないためには、とにかくユースケースが重要。スマートデバイスを具体的に何に使うか?ですね。
ユースケースの設定を蔑ろにする、もしくは誤ってしまうと、せっかく導入したスマートデバイスが宝の持ち腐れになってしまいます。星氏も取材のなかでそういう事例を見て来たそうです。

PCでの常識を外して、スマートデバイスの使い方を考える必要があるのだと思います。

この先どうなる?


Device group shot outside 2 / gailjadehamilton

星氏はまず、未来を見通すことは極めて困難と前置きした上で、過去の事例を振り返ったり、先進的な取り組みをウォッチすることが重要と語りました。

そうした中でヒントと示されたのは、以下の2点。

  • 低価格機+大量導入
  • 逆張り

まず、低価格機というのは先に挙げたとおり途上国で普及させるには低価格機が必要という話。さらに、先進国でも中華パッドくらいのスペックで自社サービス専用のAndroidデバイスを作るといった形も可能ではないか?という話がありました。

逆張りに関しては、それくらいの大胆な読みをした方が良いということだと思いますが、例えばペンを使うとか、スマートデバイス上でスクリプトを動かすといったことが例として挙がりました。

ということで、今まで10年くらいPC向けのWebアプリが我が世の春を謳歌したように、これから10年くらいはスマートデバイスがそうなるのではないかと思いました。

私自身としても、スマートデバイス+クラウドの対応能力を、ユーザとしてもちろん、開発者としても磨いていきたいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。