既に2回のワークショップで記事を書いたように、お客様企業(事業部)でのビジネスプラン作成のファシリテーションを行っています。 第2回のワークショップではSWOT分析を行い、クロスSWOT分析でビジネスアイディアを出すところまでを行いました(実際には、ビジネスアイディア出しは宿題になりましたけど)。
第3回となる今回は、考え出したビジネスアイディアに肉付けを行い、論理的な妥当性の検証を行うため、バランス・スコアカード(BSC)を使って戦略マップを描きました。
BSCを使うシーン
BSCは経営における一場面でのみ使うもではなく、PDS(計画・実行・検証)サイクルのすべての場面で活用することが出来ます。 今回のワークショップでは、「計画」の初期に行う戦略マップ作成のために、BSCを使いました。
BSCをビジネスプラン開発に使う
BSCで使う4つの視点は一般的には、「財務の視点」、「お客様の視点」、「業務プロセスの視点」、「人材・変革の視点」です。(必ずしも、この4つではありません。)
この4つの視点から挙がったそれぞれの施策(パフォーマンス・ドライバー)は、上から下に「どうすれば実現出来るのか?(How to do?)」、下から上に「なぜそれが必要なのか(Why? Because…)」と追いかけて、一貫性のあるストーリーが出来上がれば、少なくとも論理的には妥当なビジネスプランであると言うことが出来ます。
お客様価値を定義する
BSCで戦略マップを作る上で最初にやることは、考え出したビジネスアイディアは「お客様にとってどういう価値をもたらすか」を定義することです。 お客様にとって価値のないビジネスは、意味がありません。そこから利益につながることはありません(ごく短期的にはあるかもしれませんが、それは欺瞞です)。
そのお客様とは誰か?
お客様価値を定義する際に注意するべきことは、その「お客様」とは誰のことか?も定義することです。
ワークショップでは、1人が考えた1つのビジネスアイディアを題材に、グループメンバー全員で戦略マップを作るという方法を採りました。(他のメンバーが考えたビジネスアイディアについては、次回のワークショップもしくは宿題という形で、戦略マップを作ってもらいます。)
その際、メンバー間で「お客様」の認識にズレが出ることがあります。 この認識がズレていると、いくら議論してもお客様価値は定義出来ません。
それは儲かるのか?
お客様にとっての価値が定義出来たら、次に考えるのは、財務の視点です。自社がその価値をお客様に定義出来るようになったら、儲かるのか?ということです。健全なビジネスを行う上で、利益があることは必須条件です。 具体的な数字として、どれだけの利益が出るのかを検証することは、必要なことです。
しかし、ワークショップの時点で答を出すことは困難です。戦略マップ作成によって、ビジネスアイディアの論理的妥当性が確認された後、さらに肉付けしてビジネスプランに育てていく中で実施すれば良いでしょう。
ただ、少なくともそのビジネスアイディアがどういう風に売上増加につながるかを考えることは出来ます。すなわち、お客様の数が増えるのか、同じお客様が買う商品数が増える(クロスセル)のか、その商品の単価が上がる(アップセル)のかといったことです。
コスト削減という方向性
財務の視点における施策には、売上増加の他にコスト削減もあります。コスト削減はもちろん重要な施策ではあるのですが、それが抜本的な削減となり、価格の値下げにまでつながらなければ「お客様価値」の定義が難しくなります。
今回のワークショップでは、「機会」と「強み」を意識した攻めのアイディアプラン創出を考えているので、出来るだけ「売上増加」につながる検討をお願いしました。
業務プロセスと人材・変革は状態で定義する
お客様価値を定義し、財務的にもやる意味があるということが一応言えたなら、次は具体的にどうすれば良いかを検討します。
業務プロセスの視点
業務プロセスの視点では、定義したお客様価値を実現するためには、自社がどういう業務を行えば良いかを検討します。例えば、どういう商品(製品)を展開すれば良いのか、どういうサービスが行われていれば良いのかといったことです。ここで、あまり具体的に「○○システムを作る」といった「行動」に関することは言わないようにします。それよりも、お客様から見える「状態」で定義していきます。
例えば「ネットショップのWebシステムを作る」という「行動」の定義よりは、「ネットで商品が購入できる」という「状態」の定義の方が望ましいのです。状態で定義してあれば、それを実現するための行動は後で選択出来るようになります。ネットで商品を購入できるようにする方法は、自社でWebシステムを作るだけが解ではなく、楽天市場などのショッピングモールに入っても良いし、ヤフオクで売っても良いし、スマホアプリを作っても良いのです。
人材・変革の視点
最後に、定義した業務プロセスを実現するために必要となる人材や変革を検討します。これも「○○研修を実施する」という「行動」より、「○○が出来る人」といった「状態」で定義する方が良いでしょう。「○○が出来る人」を獲得する方法は、自社人材の育成だけでなく、中途採用や企業の買収、他社との提携といった方法もあるのです。また、個々人の人材というだけでなく、チームワークや企業文化といったことも検討します。