クラウドサービス推進機構の第1号認定サービスを総覧する(業務系サービス編)

クラウドサービス推進機構(CSPA)が、クラウドサービスの第1号認定サービスを発表しました。

CSPAにはITコーディネータ協会(ITCA)も関与していて、ZDNet Japanの記事には、ITCA会長の播磨崇氏のコメントも掲載されています。

認定基準は下記のとおりとのこと。

中小企業が安全に、安心して持続的にビジネスで活用できるクラウドサービスとして、最低限必要な要件を整理してガイドラインとして公開している。審査に際しては、経営、運用、SLA、技術、取引条件の整備状況、サービス体制、その他(経営基盤、人材、実績など)の7 つの視点からサービスを評価した。

第1号認定サービスとなったのは9つ。ZDNet Japanの記事では、それがどのようなものか分からないので、一つずつ見ていくことにしましょう。

認定されたサービスは、業務系4本、情報系4本、開発系1本。今回は、業務系の4本を見ていきます。

業務系サービス

ClearWorks

スマイルワークス
https://www.clear-works.jp/

会計ワークス、販売ワークス、給与ワークスで構成された統合業務ソフトをクラウド化したもの。弥生会計などを使っている中小企業がクラウドに移行する際にマッチするのではないでしょうか。(弥生会計もクラウドサービスを始めているので、そのようなニーズは今後減っていくと思います。)

価格はそれぞれ初期費用が1万円、月額3,000円。全部使えば月額9,000円がランニングコストになりますが、中小企業で導入しやすい金額といえます。

会計クラウドといえば、FreeeやMoneyForwardといった新興勢が力をつけており、会計以外の業務にも触手を伸ばしつつあるところでもあります。

OPROARTS

日本オプロ
https://www.opro.net/products/Prime/index.html

帳票印刷ソリューションのクラウドサービスです。SalesforceやKintone等と連携した帳票出力が可能。出力先はPDFファイルの他、直接印刷、FAX送信、メール送信、封入・投函サービスまで提供されています。

帳票のデザインはWebブラウザ上で行えるとのこと。日本オプロ社に依頼することも出来ます。

価格はWeb上では分かりませんでした。何らかの開発なしには使えないサービスなので、要問い合わせです。但し、必要最小限の帳票出力エンジンを使えるOPROARTS Coreは、年間1,200ページまでの出力で36,000円という記載があります。

AZCloud SaaS FoodCORE

富士通システムズ・イースト
http://www.fjm.fujitsu.com/solution/azservice/azcloud/azcloud_saas/foodcore/

食品加工業向けの業務システム一体型クラウドサービスで、販売管理、生産管理は食品加工業特有の機能を持ち、さらに共通機能となる会計管理も行えるようになっています。

価格は初期費用が50万円、ランニングコストが月額40万円。年間では480万円となるので、かなりの金額となりますが、食品加工工場を持つような中小企業の業務システムを一括で賄えると思えば、妥当な金額なのかもしれません。

こういう業種特化型のサービスも認定サービスとして選ばれるのですね。

証明写真ソリューション

共同印刷
http://www.kyodoprinting.co.jp/products/it-communication/system/photoid.html

スマホで撮影した顔写真を証明写真として一括管理するクラウドサービス。

価格は初期費用が3万円。ランニングコストは月額固定費が1万円と、写真1枚ごとに70円の従量課金となっています。

受験業務、IDカード発行業務といった展開例が提示されていますが、かなり利用シーンが限定されるのは否めません。展開例のような機関ではたしかに負担軽減効果は期待できますから、良いサービスなのだろうとは思います。ただ、認定基準に挙げられているような中小企業でのニーズはあるのか疑問が残ります。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。