クロスSWOT分析のワークショップ
以前からお手伝いさせていただいているITコーディネータ・プロセスガイドライン(ITC-PGL)に準拠した企業内研修で、昨日は経営戦略フェーズのワークショップを行いました。
変革認識フェーズ
ITC-PGLでは、まず変革認識フェーズにおいて、企業が変革に乗り出す必要性を認識します。外部環境の変化に気づき、また自社の強みと弱みを認識し、それを現在の事業ドメインと、SWOT分析の結果としてまとめます。そして、自社がこれから目指していく方向性、あるべき姿をビジョンとしてまとめ、変革の必要性を経営層や社員の間で認識するわけです。
経営戦略フェーズ
変革認識フェーズで行う事業ドメインやSWOTでの分析は、変革の必要性に気づき、変革を実行しようと決意することがゴールであり、実際の変革に向けた戦略立案は、次の経営戦略フェーズでさらに精緻に、具体的に行っていきます。
昨日のワークショップは、その第1回目であり、変革認識フェーズで行った事業ドメイン分析やSWOT分析を元に、分析の精度を高めていきました。
事業ドメイン分析では、「お客様」、「(お客様の)ニーズ」、「コアコンピタンス」について、これから目指していく姿を定義していくのですが、コアコンピタンスの定義については非常に有意義な議論が行われました。
コアコンピタンスを発見する切り口
コアコンピタンスとは
「コアコンピタンス」とは、他社が模倣できない自社の強みのことをいいます。商品・サービスの内容や戦略・戦術ではなく、そうした商品・サービスが展開でき、戦略・戦術が実行できる理由は何かを考えます。例えば、組織文化やノウハウといったものがコアコンピタンスといえます。
ただ、実務においてはこの定義をそのまま当てはめるのは難しいような気がしています。特に中小企業においては「他社が模倣できない」を本当に満たす強みを見つけるのは容易なことではありません。
だから、既存のお客様を他社に奪われない、新たなお客様を他社競合の中から獲得するための「参入障壁」は何かという視点で考えても十分ではないかというアドバイスをさせていただきました。
「機会」は営業の枕詞である
新たな事業価値やビジネスモデルを考え出すため、クロスSWOT分析では「強み」と「機会」を組み合わせた分析を重点的に行いました。(「強み」と「脅威」、「弱み」と「機会」、「弱み」と「脅威」についても検討するべきですが、時間の都合です。)
そこで議論を進める上で、より深い議論の誘い水となるキーフレーズが自然に生まれたのです。それは、「機会」は営業の枕詞であるということ。
「機会」は世の中の変化の中から自社の事業機会となりそうな変化をいいます。SI業界でいえば、クラウド化とか、内製化とか、ビッグデータとか、そういうバズワード的なキーワードが出てくるでしょう。たとえば、お客様を前にして、「クラウド流行ってますね」、「クラウドを使えば○○ができてメリットがありますよ」とかプレゼンテーションをしたとする。でも、そのお客様は実はそんなことを聞きたいとは思っていないのです。それは、業界誌でもネットメディアでも見れば、いくらでも書いてあることなのです。
だから、そういうことを話しても、それは営業の枕詞である。その枕詞のあとに「クラウド、うちでも対応できますよ」と付け加えても、対して意味はないのです。お客様は聞いてくるでしょう。「で、おたくに頼むと何が良いの?」。
この質問にどう答えることができるか。それが、参入障壁を築けるか否かを決めます。その答えを、自社の強みの中から見つけないといけないのです。
コアコンピタンスは「組み合わせ」で築く
そうした議論を進めるうちに、参加メンバーから「組み合わせで考えることが必要なのではないか」という意見が出ました。素晴らしい着想だと思います。
コアコンピタンスは強みの「組み合わせ」によって生まれます。特に中小企業においてはひとつの強みが参入障壁となるほど圧倒的な強みとなることは難しく、強みの組み合わせ方を工夫することで、総合的な強みとしていくことが求められます。
分析して現れた一つ一つの強みは、目に見えるもの、言葉として定義できるものです。その組み合わせもやはり言葉に出来るでしょう。しかし、その組み合わせを発見し、きちんと実現出来る理由、その妙味のようなものこそ、本来のコアコンピタンスでいう組織文化やノウハウと言えるのではないでしょうか。
その点で、コアコンピタンスの本質を突く着想ではないかと思うのです。