IoTでの新サービスを活用法と変化のマトリクスで考える(2)

前回の記事では、IoTや人工知能をどのようなサービスで活用できるかという点と、社会に与える変化の方向性をマトリクスにして考えてみることを提案しました。

iot-matrix

 

マトリクスに事例をあてはめる

今回は、ある日の日経新聞で取り上げられていたIoT関連の話題を当てはめてみましょう。(以下の引用はすべて日本経済新聞2月2日付紙面から)

米アマゾン・ドット・コムが電機メーカーと組み、洗剤などの補充品の残量が少なくなった場合に自動的に発注する機能を持つ家電や情報機器の開発、販売に乗り出した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と開発した洗濯機などをすでに発売。あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」の広がりをとらえ、ネット通販事業の拡大をめざす。

まず、この例は人間に変わって「自動的に発注」しますので、Aの役割変化にあたります。また、自動的に行動しますので、3の自動です。つまりA-3にあたるわけです。ただ、現在開発されているものは、その時点の残量があらかじめ決めておいた発注点に至っているかを見ているだけだと思いますので、2の予測は行っておらず、活用度合いとしては発展途上と言えるかもしれません。しかし、今後はそれまでの洗剤の使用傾向などから未来の傾向を予測し、発注に至るといった進化が期待されます。

ブラザー工業とはインクなどを自動的に発注する印刷機を開発した。45以上のモデルが対象で、ネットに接続し、同社のウェブサイトから登録するだけで自動発注が可能になるという。

この例も自動的に発注しますので、Aの役割変化にあたります。インクがどの状態になったときに発注するのか分かりませんが、やはり先ほどの例と同様に残量と予め決めておいた発注点を見ているだけでしょうから、やはり発展途上のA-3といったところでしょう。

SOMPOケアネクストは老人ホームの施設の高度化を進める。居室内に見守りセンサーなどICT(情報通信技術)を導入する方針で、入居者の体調変化などを把握しやすくする。転倒事故などの防止に加え職員の夜間の見回り業務の軽減などにもつながると見る。16年度中にすべての入居者に行き渡るようにする。

こちらも、それまで職員が行っていた見回り業務の役割変化(変化の方向性:A)といえます。しかし、見守りセンサーから自動的になにか行動が行われるわけではないので、活用度としては1の可視のレベルにあります。つまり、A-1というわけです。
今後の展開として、体調変化の予測(活用度2)が行われるようになったり、その予測に基づいて室温や照明が自動制御(活用度3)されるようになると、活用度が上がることになります。また、その際の自動制御が入居者の方の好みなどに合わせるようになると、変化の方向性もAの役割変化とBの最適化を併せ持つようなことになります。

発展の方向性を考えるツール

このように、活用度と変化の方向性のマトリクスを有効活用することで、IoTを使ったサービスの類型を定義するだけでなく、将来的な発展の方向性を考えることができるようになります。

私が現在携わっているクライアント様の中にも、IoTの活用がテーマになっているところもあります。提案時やファシリテーションを行うことになった際などに、このマトリクスを活用していきたいと考えています。’

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。