M1 Max(GPU 24core)14インチMacBook Proの機械学習性能

前回、M1 Max MacBook Proのバッテリー持ちについて検討しました。

当然のことながら、バッテリー持ちだけがノートパソコンの比較ポイントではありませんので、今回は高性能さについて見ていきたいと思います。
M1 MaxBook Proの性能比較でよく使われているのは、Geekbenchなどのベンチマークスコア以外では、4K動画などの書き出し速度だと思うのですが、私は動画はほぼやらないので、実のところあまり参考になっていません。
では、私が高性能を求める理由がどこにあるのかというと、機械学習の性能です。クラウドAIを使っている場合はほぼ関係しないのですが、ローカルでモデルの学習を行うようなこともあるので、それがどの程度の時間で終わるのかは、私自身の仕事のアウトプット性能に直結するわけです。

M1 MaxとM1 Pro、さらにはTITAN RTX GPU(だいたい30万円くらいするグラフィックボード)やオンラインで使えるGoogle Colaboratoryとの性能比較をしている方がいました。

YouTubeの動画にもなっています。

ここで既にM1 Maxのスコアが出ているのですが、たぶん32コアGPUモデルだと思います。私の持っている24コアGPUモデルではどうなのか。同様の性能評価を行えるコードがGitHubにありますので、私の環境で試してみました。

CIFAR10

まずは6万枚の画像に10種類のラベルが付いているCIFAR10を使った画像分類モデル作成にかかる時間の評価から見ていきます。

Cifar10

2022 07 20 10 20 56

数値はtime_per_epoch、つまり1エポックの学習にかかる時間です。「MacBook Pro 14inch M1 Max 24core GPU」という長い名前が付いているデータが私のMacBook Proで、あとは上記のGitHubのリポジトリに含まれていた計測済みのデータです。

TITAN RTX GPUが圧倒的な性能を見せつけています。意外なのはApple M1(YouTubeを見ると13インチのM1 MacBook Proのようです)が優秀な結果で、後は32コアM1 Max→私の24コアM1 Max→M1 Proという順当な結果になっています。M1 ProでもGoogle Colab(Tesla K80 GPU)よりも性能が高いようです。
グラフの方を見ると分かりやすいですが、32コアと24コアのM1 Max同士の差はそれほど大きくないことに比べ、24コアM1 Maxと、GPUが16コアのM1 Proの差は大きく出ています。M1 MaxとM1 ProはCPU性能は同じで、GPUのコア数が16(M1 Pro)→24(M1 Max)→32(M1 Max)と8コアずつ増えているのですが、機械学習性能はそのようなリニアな動きにはならないようです。
もしかしたら、M1 ProとM1 Maxのメモリ帯域幅の違いが影響しているのかもしれません。

Food101

次に10万1千枚の料理の画像に101種類のラベルが付いているFood101を使った評価です。

Food101

2022 07 20 10 21 31

こちらもTITAN RTX GPUが圧倒的な性能を見せていますが、32コアM1 Max→24コア M1 Max→M1 Proという結果になっており、M1 ProでもGoogle Colabより性能が高いという結果です。また、32コアと24コアのM1 Maxの差はそれほどなく、24コアM1 MaxとM1 Proの差は大きく出ています。

California Housing

最後はディープラーニングではなくランダムフォレストを使った機械学習で、交差検証法(クロスバリデーション)を使ったモデル作成の全体時間による比較です。

Housing

2022 07 20 10 21 58

scikit-learnを使ってランダムフォレストモデルを作成したものなので、CIFAR10やFood101を使ったディープラーニングと比べると、GPU性能の差はあまり影響しないことが考えられます。
それでも、32コアM1 Max→24コアM1 Max→M1 Proという結果になりました。32コアと24コアのM1 Max間の差はあまりなく、M1 Proとは差が付いているという傾向も同じです。

まとめ

ということで、24コアモデルのM1 Maxであっても、M1 Proと比べるときちんと性能差は出ていることが分かりました。
特にFood101の結果では1エポックあたり1分以上高速に動作しており、10エポックだと10分以上、仮に100エポックすれば1時間半以上の差が付くわけですから、M1 Maxの投資価値はあると言えます。

ところで、M1 Maxの32コアと24コアでの差があまりない件についてですが、これは14インチモデルであることが影響しているかもしれません。

こちらの動画を見ると、14インチモデルにおける32コアのM1 Maxは性能を完全に発揮できていないのではないかという話です。
そのため、14インチMacBook Proにおいては24コアGPUモデルが実はスイートスポットではないか?とのことです。やったね!

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。