MacBook Pro 14インチ M1 Max GPU24コアのバッテリー持ちについて

MacBook Pro 14インチのM1 Maxモデルを入手して10日ほどが経ちました。
GPU24コアのM1 Maxで、メモリは32GB、SSD2TBのモデルです。

ファーストインプレッションは入手した翌日に書きました。
今回はバッテリーもち、次回は機械学習におけるパフォーマンスについて書いてみようと思います。

M1 Proよりは短いが、実用上の問題はない

M1 Maxにする前は、M1 Proのモデルを使っていました(メモリ、SSDは同じ)。
M1 Proの時は特にバッテリー持ちを気にすることはありませんでした。カフェなどの外出先でバッテリーで使うだけでなく、電源が使えるならUSB PD充電器で給電しながら使うこともあったので、バッテリーについて特に気にすることがなく運用していたわけです。だから、厳密にはM1 Proのバッテリー持ちは分かりません。ただ、バッテリーがどうこうと考える必要がない程度のバッテリー持ちではあったと言えるでしょう。

それがM1 Maxモデルになって急に気にするようになりました。使い始めて早々、カフェでバッテリーがグングン減っていく様を見たからです。そもそも、使い始めはクラウドストレージとの同期や、Spotlightのインデックス作成などが旺盛に動くので、消費電力は高くなりがちです。それは分かっていたのですが、なんとなくM1 MaxはM1 Proよりもバッテリーの減りが早いという印象を持つことになってしまったのです。

結論からいうと、M1 Max(私はGPU24コアのモデルです)でも、実用上の問題がない程度のバッテリー運用は可能です。
以前使っていたIntel Mac(Core i7の13インチMacBook Pro)だと、せいぜい4〜5時間で2〜3時間でダメになるということもありました。Windowsノート(Let’s note QV)でも4〜5時間だったと思います(QVは比較的バッテリーが小さいこともある)。
それが、M1 Maxは7〜8時間程度なら大丈夫。使用状況次第では、9〜10時間もイケるかも・・・。

どの程度の時間使えれば「実用上の問題はない」と言えるかは、ケースバイケースです。9〜10時間使えてもまだ短いという人もいるでしょう。特にApple M1はバッテリーに対する期待が高くなりがちで、MacBook Airとか、13インチのM1 MacBook Proだと15〜16時間イケるという話も聞きます。
私の使い方では、バッテリー運用が必要なのはカフェに行っている時間くらいです。それも、座る席次第で給電(充電)可能なこともあります。
カフェで最大2時間作業するとして、それを2軒ハシゴしたところで4〜5時間です。Intel Macだとそれは怪しく、Let’s noteなら何とか・・・という時間ですね。それが、MacBook Proなら、M1 Maxでも確信を持って大丈夫と言えます。

実際の減り具合

ある日の使用状況とバッテリーの減り具合について見てみましょう。
残り時間は、アクティビティモニタに表示される値です。

  • 朝、バッテリー残量100%の状態から使用開始。
  • カフェで1時間20分使用(Wi-Fi) バッテリー残量90% 残り時間9:34

作業内容は、ローカルでDjango(Python製Webフレームワーク)を動かしつつ(Ngrokで外部からの待ち受け有効)、ローカルのJupyter Notebookを使用するという通常の開発作業です。Safariを使ってWebブラウズ(技術資料の調査)や、Day Oneを使って日誌も書いています。メールアプリのSparkをはじめ、SlackやLINEも動いていますし、生産性向上のための常駐ツールも使って入るし・・・という感じでとにかくいつもどおりの開発作業をしています。

ここで一旦休憩。MacBook Proはスリープ状態にして、早めの昼食をとります。

  • 別のカフェに入って1時間10分使用(Wi-Fi) バッテリー残量75% 残り時間6:51

25%分のバッテリーを使って2時間半です。つまり、1時間で10%程度の消費です。

  • バスで移動中に10分程度使用(テザリング)
  • 自宅事務所に戻ってテストのためにバッテリー稼働を継続 40分程度使用 バッテリー残量59% 残り時間5:37

ここまでで、総使用時間は3時間半。2時間半からの1時間で16%と多めのバッテリー消費となりました。
メモ取りのために使っているJoplinというアプリが、同期のためか結構CPUを使っていることが分かりました。JoplinはまだARM対応していないため、Rosetta2経由の動作になっているのも、もしかしたら問題があるかもしれません。

  • Teamsでテレビ会議15分(Wi-Fi) バッテリー残量50% 残り時間2:29

自宅事務所でテレビ会議なので普段であれば絶対に給電しているはずですが、テストのためにバッテリーでやってみました。かなりのバッテリー消費です。15分で10%近くのバッテリーを使うことになりました。これはTeamsだからでZoomならもう少し良いのか等、調べてみたいですね。

  • Webでの調べ物をしつつ、BGM的にYouTubeなどを再生を3時間 バッテリー残量20% 残り時間1:50

ということで、6時間半ほど使いました。バッテリー残量は20%あるのでもう1時間くらいは問題なく使えるでしょう。
テストはここまでで終えましたが、ざっと7時間半は使えそうです。途中のテレビ会議がなければ8時間超えは間違いないでしょう。
また、この日の運用では、本当にバッテリー運用が必要だったのは最初のカフェ(2軒目に入ったカフェは電源席だった)とバスの中くらいで、1時間半くらいでした。2軒目のカフェが電源席じゃなかったとしても、3時間弱をバッテリー運用できれば良かったということになります。

傾向は1時間で10%前後

別の日にも同様の記録をしていたのですが、だいたい1時間で10〜12%程度のペースでバッテリー消費するという、概ね同様の傾向でした。
MacBook Proの14インチモデルは、公称値でインターネットブラウズが最長11時間です。その他のタスクもいろいろとやっている(バックグラウンドで動いているものを含む)ことを考えると、その8割として8〜9時間。
だいたい公称値どおりに使えると考えて良いのではないでしょうか。しかも、公称値はM1 Proモデルを含むので、それよりも性能の高いM1 Maxで公称値に近い値が出ているのなら御の字です。

バッテリー消費を減らすための工夫

ところで、上記の結果を出す前提として、バッテリー消費を減らす工夫をいくつかしています。M1 Proの頃はそうした工夫をする必要がなかったので、やはりM1 Proの方がバッテリー持ちは良さそうです。GPUのコア数やダイサイズがM1 Maxよりも小さいため、M1 MaxよりM1 Proの方がバッテリー持ちするのは当然のことですね。

セキュリティソフトを変えた

M1 ProではセキュリティソフトとしてNortonを使っていました。ただ、NortonはSymDaemonというプロセスが暴走しがち(CPU使用率が高い状態に張り付く)であるのはずっと言われていることで、公式サイトにある解決方法を試しても私の環境ではあまり改善しませんでした。

そこで、セキュリティソフトをIntegoに変えました。IntegoはNortonのように有名とはいえませんが、Macでは長い歴史のあるセキュリティソフトです。また、NortonはまだIntel用のバイナリをResetta2で変換して動作しているのですが、Integoは既にARMネイティブになっています。アクティビティモニタでCPU使用率を眺めていても、20〜30%程度のCPU使用率を維持するようなプロセスはIntegoにはありませんでした。

App Tamerを使い始めた

App Tamerを使うと、CPU使用率が高いアプリのCPU使用率を制限したり、高効率コアを使うように誘導したりすることで消費電力を制御できます。
給電時とバッテリー残量が95%以上の場合は制御を無効にして、フル機能で使うようにし、それ未満だと制御してバッテリーの急激な減少を防ぐことができます。

SafariとAd Blockerを使うようにした

デフォルトブラウザとしてSafariを使うことにしました。それまではChromeだったのですが、消費電力という面ではSafariの方が良いでしょう。実用的にも特に問題ありませんし、macOSの標準ブラウザなのでe-taxなどSafariでないと使えないサイトもあります。そのため、Safariを常用しても何ら問題なさそうです。

また、Ad Blockerも使うようにしてみました。こちらも余計なネットワーク通信を減らせるので消費電力上のメリットはあると思います。

まとめ

ということで、いろいろと工夫をしながらではありますが、M1 Maxでも(少なくとも私の使っているGPU24コアモデルしか分かりませんが・・・)実用的なバッテリー運用は可能と思います。絶対的なバッテリー持ちはM1 Proの方が良いでしょうし、さらに言えばM1の方が良いのは間違いありません。

macOSにはさらにバッテリー持ちを良くする方法が準備されています。「低電力モード」と、内蔵ディスプレイのリフレッシュレートの設定です。
低電力モードは画面の明るさを暗くし、CPUの速度を下げることで電力消費を減らします。内蔵ディスプレイのリフレッシュレートはデフォルトではProMotion(リフレッシュレートを最大120MHzとして表示するコンテンツに合わせて調整する)になっていますが、これを60Hzなどに下げることで電力消費を減らすことができるでしょう。

しかし、私はそのどちらも設定していません。こうした方法はあくまで少ないバッテリー残量で、できるだけ長時間使わないといけないような窮地に追い込まれた際に使うべきもので、常用するものではないと考えるからです。こうした機能を常用するなら、わざわざMacBook Proを買う必要はないでしょう。(バッテリー運用時のみ低電力モードONということは考えましたが、やはりバッテリー運用時でもせっかくのMacBook Proのメリットをスポイルするのは私としては憚られました。)

もう一つ、macOSには「バッテリー充電の最適化」機能があります。これはONにして運用しています。2週間程度使っていると自動的にバッテリー充電の上限が80%になります(実際にはもう少しスマートに動作する)。ここ数日はバッテリーテストのために敢えて使用中の給電を避けていますが、テスト期間を終えればバッテリー運用は給電できないときだけになるので、私のMacBook Proもいずれは80%が充電上限になるでしょう。
そうすると、上記のバッテリー持ちの時間は8掛けになるわけですが、それでも6時間程度はバッテリー運用が可能でしょうから、私の用途でいけば問題ありません。それで消耗品であるバッテリーをできるだけ大切に使って、MacBook Pro自体の運用期間を長くすることができます。

この記事では、バッテリー持ちについて重点的に見てきました。ただ、当然ながらバッテリー持ちだけが判断基準ではなく、M1 Maxならではの性能もきちんと見なければいけません。次回の記事では私の仕事でもある機械学習の性能について考えてみたいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。