前回の記事から、あらためてDXレポートを読み返して、いま、どう活かせるかを考えています。
今回は、2020年12月に公開された「DXレポート2」について、その要点と企業のDX推進における重要なポイントをお伝えします。
DXレポート2の背景と目的
DXレポート2は、2018年に発表されたDXレポート1(2018年9月公開の「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」)で受けた誤読への反省を踏まえて作成されています。
DXレポート1では「既存システムの刷新」に焦点が当てられがちでしたが、実際にはレガシーシステムの刷新だけでなく、「レガシー企業文化からの脱却」が重要だということを明確にしています。
DXレポート2のポイントは下記のとおりです。
- 企業が目指すべき方向性
- DX戦略の定義の重視
- デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXの3類型の導入
- 新たな価値創出と業務生産性向上の2つのアプローチ
企業が目指すべき方向性
Society 5.0に向けた社会のデジタル化が進む中、企業は以下の点を意識する必要があります。
- デジタル技術を活用した新しいサービス創出
- 顧客・社会の課題解決のための迅速な製品・サービス提供
- データに基づく継続的な改善
- 変化に素早く対応し続ける能力の獲得
DX推進のための短期的・中長期的対応
企業がDXを推進するための対応として、短期的、中長期的に分けて整理されています。
短期的対応
- DX推進体制の整備
- CIO/CDXOの役割明確化
- 遠隔コラボレーション環境の整備
- DX戦略の策定と業務プロセスの再設計
DXレポート2が公開された2020年12月はコロナ禍の真っ最中であり、リモートワーク対応にも重点が置かれています。
いま、コロナ禍が開けて、リモートワークはある程度定着した感があるものの、その揺り戻しも起きています。また、コロナ禍に急作りしたリモートワーク対応のIT環境整備を、改めて整備しようという動きもあると思います。
中長期的対応
- デジタルプラットフォームの形成
- 産業変革の加速
- DX人材の確保・育成
デジタルプラットフォームとは、DXレポート1でも取り上げられている協調領域(競争分野ではないシステム領域)のシステム共同運用を指しています。システムだけでなく、BPOまで進めることもあります。
ユーザー企業とベンダー企業の新たな関係性
DXを成功させるためには、ユーザー企業とベンダー企業が共創関係を築くことが重要です。
ベンダー企業は以下の役割を担うことが期待されています。
- ユーザー企業の変革を共に推進するパートナー
- DXに必要な技術・ノウハウの提供
- 協調領域における共通プラットフォームの提供
- 新ビジネス・サービスの創出
政府の支援策
政府はDX推進のために以下のような支援策を展開しています:
- DXの認知・理解向上施策
- DX成功パターンの策定
- 共通プラットフォームの推進
- リスキル・人材流動化環境の整備
- 中小企業向けデジタル化支援
- DX投資促進税制
まとめ
DXレポート2は、単なるシステム刷新ではなく、企業文化や事業モデルの変革を含む包括的なDXの重要性を強調しています。企業はデジタル技術を活用して顧客や社会の課題を解決し、新たな価値を創出することが求められています。
現在のDXの考え方は、ほぼ、このDXレポート2に基づいているといって良いでしょう。ITコーディネータ協会のプロセスガイドラインVer.4でも、DXレポート2に直接言及することはないものの、企業が目指すべきデジタル経営像として、その精神が注入されているといっても過言ではありません。
DXレポートは、この後、2021年8月の2.1、2022年7月の2.2までが登場しています。
次回の記事で、また整理していきたいと思います。