いま、あらためてDXレポート2.1と2.2を読んでみる

先週から、「いま、あらためてDXレポートを読んでみる」という記事を書いてきました。
今回は、DXレポート2の追補として登場したDXレポート2.1、そして2.2について、まとめてみたいと思います。

DXレポートの背景と概要

DXレポート2.2の冒頭で、それまでに出たDXレポートの概要が整理されています。

出典:DXレポート2.2(概要)P1

前回の記事に書いたように、DXレポート2は「レガシー企業文化から脱却し、本質的なDXの推進へ」が主題です。いま、企業のDXとは何かを説明する際には、このレポート2がベースになっているといって良いでしょう。

DXレポート2.1は、DXレポート2で示した「デジタル産業」がどのようなものか、目指すべきデジタル産業の姿・企業の姿を提示するものです。そのため、DXレポート2.1には「DXレポート2 追補版」というサブタイトルが付いています。

また、DXレポート2.2では、DXレポート2.1で示された「目指すべきデジタル産業」に向かって、具体的な方向性やアクションを提示するという立ち位置です。
この記事では、個々の企業のDXを支援するという立場から、DXレポート2.2を中心に見ていくことにします。

DXを成功させるための方向性

DXは個々の業務の効率化を目指すものではなく(それはDXレポート2において、デジタライゼーションと定義した)、組織横断/全体の業務のデジタル化や、顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革を目指すものです。

そのため、コスト削減を目的としたデジタル投資だけでなく、全社的な収益向上を目指したデジタル投資の割合を増やすべきであると提言しています。また、収益向上の方向性として、デジタルでしかできない新規ビジネスの創出と、デジタル技術の導入によって収益に直結する既存ビジネスの付加価値向上の2つを挙げています。

出典:DXレポート2.2(概要)P6

デジタルで収益向上を達成するための特徴

DXレポート2.2には、効率化向上の企業とデジタルで収益向上を達成した企業の特徴の違いが、参考として掲載されています。
企業にとって役立つ指針だと思いますので、取り上げておきます。

No. 効率化中心の企業 デジタルで収益向上を達成した企業
1 個別部門から順番に変革する 全社を対象にトップダウンで一斉に実施する
2 経営者はビジョンや戦略を示す (ビジョンや戦略を示すだけでなく)判断の拠りどこととなる行動指針を示す
3 国内の同業他社事例に頼る 異業種であってもグローバルに通用するような事例を参考にする
4 変革に立ち止まる (変革を)顧客や市場の反応に合わせて継続する
5 競争優位性は、製品・サービス中心 (競争優位性は)顧客行動をデータでどれだけ可視化(再現)できているか
6 競争優位性は、個人単位の強みに頼る 組織や業務を横断してどれだけ広範囲にデータが共有され、活用できているか
7 自社の強みを外部に発信できていない 自社の強みを外部に発信できている(ため、顧客や他社とつながるエコシステムに自社が組み込まれ、持続的な成長が期待できる)
8 他社サービス(特にプラットフォーム)は競争領域 他社サービス(特にプラットフォーム)は協調領域として積極活用(自社の強みが明確なら、協調領域が明確)

まとめ

今回はDXレポート2.1および2.2から、企業のDXを検討する上で役立ちそうな部分だけを整理しました。

経済産業省ではDXレポート以後、さらに様々な施策やガイダンスを公開しています。今後、そちらについても整理していきたいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。