設立4日前

ついに、会社設立の日が4日後の今週金曜日に迫りました。
当日までの段取りは片付いてきたので、あらためて、どういう会社にするべきか、設立趣意書について検討してみました。

設立趣意書は、ソニーが東京通信工業として創業した際に井深大が書いた「真面目ナル技術者ノ技能ヲ最高度ニ発揮セシムベキ、自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」というのが有名です。

ちなみに、設立後に税務署に出す法人設立届出書の添付資料として、設立趣意書は挙げられています。ただ、小さな会社ではほとんど作成されず、提出しなくても特に問題はないようです。

設立趣意書を書くにあたって、まずは私自身が今までどういうことを言ってきたのかを振り返る必要があると思い、これまでに書いたブログ等を読み直してみました。
ブログやWebサイトでのテキストは、今すぐに読めるものとしては2001年7月の記事が最も古いようです。

エンジニアはビジネス感覚が必要です。企画や営業のすべてをエンジニアが行うわけではないとしても、ビジネス感覚を持ったシステム開発が必要になると考えられます。
ところで、オイコノミコスという言葉があります。ギリシア語で「共同体のあり方」を意味します。エコノミクス(経済)の語源と言われています。つまり経済とは社会(共同体)のあり方を考えることでもあるのでしょう。
エンジニアは、ビジネス感覚を超え、社会のあり方についても想いを巡らせることを考えるべきです。

少し端折りましたが、このようなことが書いてありました。
「これからのエンジニアはビジネスが分からないと駄目。技術が分からないのはもっと駄目」というのは、ウルシステムズの漆原さんの(数年前のデブサミで言った)言葉ですが、まさにそういうことで、このことについては、私はずっと言い続けてきたようです。ということで、これは設立趣意に入れなければならん。

それから、情報システム業界の現状認識として、

私はこれからのSI業界はオフショア、クラウド、内製化の3つが鍵を握っていると考えている。

これも、ここ数年言い続けています。そこで私が出した回答は、

内製化が進展したときに外部のSEとして何が出来るだろうか。それは、高度な技術力と経営・管理能力の両方を持ったSEがコンサルタント的役回りで内製プロジェクトに参画することだと思う。逆に、そうでないと外部のSEを雇う意味がない。

ということで、これもまた技術とビジネスと言っていますが、やはり設立趣意入り。
私は(ユーザー企業にとって)外部の人間であることに強いこだわりを持っています。外部の人間だからこそ吹かせられる風がある。その風は企業の変革にとって必要不可欠なものであると考えているのです。内製化の進展は私自身としては好ましいことだと思っているのですが、そんな中でも外部を貫くには、そういう会社にしなければならないと思うのです。

「外部」ということについては、こんなことも書いています。

経費という観点でだけ人を見ているのだから、同じ仕事が出来るなら安い方が良い。
だから、その考えでは駄目だという問題意識がまず必要になるのです。外部の人間としてやる仕事を、「外部の人間でもできること」から、「外部の人間でないとできないこと」へ変えていかなければならない。

今年のデブサミでサーバーワークスの大石氏が言っていた「人材バッファの役目しか果たしていないSIerは淘汰される」というのが、まさにこれだと思います。

それから、今までエンジニアとしてやってきたこととして、

システムの設計をするにあたって、顧客の気持ちを考えるというのは非常に重要なことです。顧客業務を理解する上で、私が重要に思っているのは、顧客がどういう気持ちで普段の業務をしているのだろうか?ということを考えることです。

というのがあります。私が(ブログや飲みの席などで)何度となく例示している象設計集団の働き方も、今後の情報システム開発の理想として追い求めたいところです。(象設計集団については、このブログでもいずれ書きます。)

もう一つ。

ことあるごとに書いてきた「個の時代」というこれからの新しい時代にも、ついに身を呈して、乗り出していくことになります。自分自身が一つの個となり、緩い繋がりの中で仕事をしていくようになりたいと思います。

これはフリーとしてアルティザンエッジを立ち上げるときに書いたものですが、「個の時代」という認識はずっと変わっていません。
法人化しても、個の時代のプレーヤーで居続けられる規模を維持したいと思っているし、法人化した以上は個の結節点としてプロジェクトの核となれるようにしていきたいと思います。

ということで、設立趣意書はまだ未完成ですが、設立の暁には公開したいと思います。

想いは実現しないといけないし、利益もあげないといけないし、利益のためにはスピードも重要。そして、もちろん品質も一定以上を維持しなければならない。
それを実現するために技術というものはあるのではないかと思うし、そういう厳しい戦いを続けるために想いの強さは重要。結局、最後は「想い」に戻ってくる。

「想い」はとても重要(いちばん重要?)なものだと思っているので。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。