新規事業の事業計画書っぽいものを書くことになりました。本当は何もないところから事業計画書を書いて、それから事業化を図るのでしょうが、今回は既に動き出している事業のものです。だから、事業計画書「っぽい」ものです。
いままで、プロジェクト計画書は何度も書いたことがあるのですが、事業計画書は書いたことがないので、書き方をざっと勉強することにしました。
今回使うテキストは、「これ1冊でできるわかる事業計画書のつくり方」です。著者は渡邉卓さん。中小企業診断士だそうです。
事業計画書の目的
- (事業計画書の作成を通して)計画に実現性があることを確認する
- (事業計画書によって)計画について十分に説得力できる
事業計画書の作成はある程度フレームワーク化されたものなので、その作成を通して計画の実現性を検証していくことができます。事業計画書に書くべき内容なのに書けることがない、考えておくべきことなのに考えていないということに気づけば、それだけで作成している意味があります。そして、事業計画書は経営者や金融機関などに計画を説明し、納得してもらわなければなりません。それだけ、説得力のある資料になっていないといけないわけです。説得するべき相手には、その事業に参加するメンバーも含まれると思います。そのメンバーの貴重な時間を割いてもらうわけですから、この事業は意味があることで、合理的なものだと理解してもらう必要があります。そうでないと、積極的な貢献は望むべくもありません。
事業計画書作成のステップ
- 環境を分析し、事業の切り口を発想する
- 1で発想した切り口をもとに、コンセプトやビジネスモデルをまとめる
- 事業計画の実現性を裏付ける数値的資料をまとめる
上記のステップから、事業計画書は事業の枠組みの説明と、売上計画、損益計画などの数値計画の説明に分かれることが分かります。
環境分析
- SWOT分析
- 外部環境分析(機会・脅威)
- 内部環境分析(強み・弱み)
- 新規事業の方向性を考える(アンゾフの成長ベクトル)
- 市場と競合の状況を描く
- シナリオライティング
まずは環境分析を行います。環境分析の定番中の定番はSWOT分析。外部環境から「自社にとっての」機会と脅威を、内部環境から「自社の」強みと弱みを分析していきます。外部環境分析はマクロ環境とミクロ環境に分かれます。マクロ環境は経済動向や法改正、社会のトレンド変化、技術の進展などです。ミクロ環境は対象市場の市場規模と成長性、顧客のセグメント化と対象セグメントの決定、対象セグメントのニーズの掘り起こしを行います。さらに競合他社の分析も欠かせません。こうした外部環境、内部環境の分析から、自社にとって何が機会なのか、何が脅威なのかをリストアップしていきます。
内部環境分析は開発力、生産力、販売力、経営力の観点から自社の強みと弱みを見つけ出します。
強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)がリストアップできました。これをマトリクスにしてみると、自社がやるべきことのヒントが見えてきます。
機会×強み・・・自社の強みを使って、取り込むことができる機会はないか?
脅威×強み・・・他社には脅威でも、自社の強みで機会に変えることはできないか?
機会×弱み・・・機会を自社の弱みでとりこぼさないようにするには、何をすればよいか?
脅威×弱み・・・脅威と弱みがダブルとなって、最悪の事態を招かないようにするにはどうすればよいか?
SWOT分析から見えてきた自社のやるべきことを、製品と市場の観点から分析していきます。アンゾフという人が考えた成長ベクトルでやってみましょう。これもマトリクスです。
既存製品×既存市場・・・市場浸透戦略(宣伝や価格などマーケティング要素を有効活用して、シェア拡大を図る)
既存製品×新規市場・・・新市場開拓戦略(新しい顧客層、新しい地域などに既存製品を投入する)
新製品×既存市場・・・新製品開発戦略(既存市場に画期的な新製品を投入する)
新製品×新規市場・・・事業多角化戦略(ハイリスク・ハイリターンだが、既存市場の衰退や事業ポートフォリオの観点から乗り出す)
さて、ここまで考えてから環境分析に立ち返ると、さらに分析を深める必要性があることが分かります。乗り出す市場の規模は、実際どうなのか。過去から現在にどのように規模が拡大(縮小)したという実績を調べ、未来はどのように推移していくのかを予測しなければなりません。また、その市場に現在どのような競合がいて、その競合の会社として、あるいは商品の強みと弱みは何なのかを調査していきます。そうして、自社の入り込める余地を探っていくのです。
このステップの最後はシナリオライティングです。事業の楽観的シナリオと悲観的シナリオを書いて、リスクの想定やその対策を行います。最後に現実的なシナリオを書き、成功への確信を関係者との間で共有します。
事業の枠組み作り
- 「こうありたい」というビジョンを描く
- ビジョンに時間軸を持たせて「目標」にする
- 「儲かる仕組み」コンセプトとビジネスモデルを作る
- 顧客ターゲット(誰に)とニーズ(何を)の検証
- 仕上がった商品の検証→独自技術(どのように)の検証
- 使える経営資源はないか?(シナジー)
- リスクマネジメント
SWOTや成長ベクトルでの分析をもとに、自社はこれからどうなりたいのかというビジョンを描きます。市場でのポジション、経営指標、組織と人の関係で描くとビジョンは効果的になります。
次に、ビジョンは未来の一時点での姿なので、それをブレイクダウンして半年後、1年後、3年後、5年後といった時点での目標を明確化します。目標は定性目標と定量目標で立てます。定量目標の代表は売上と利益です。時間軸に沿って、いつ単年度黒字になるのか、いつ累積損失を解消するのかといった目標を設定します。
いつ、いくら売れていくら利益が出ると目標を立てたら、どうやってそれを実現するのかを考えなければなりません。ただ、いきなり細かい営業戦術に走るのではなく、まずはコンセプトレベルということでビジネスモデルを検討します。ポイントは、「誰に(顧客ターゲット)」、「何を(顧客ニーズ)」、「どのように(独自技術)」売るのかを明確にすることです。その際、環境分析で行った市場(顧客)のセグメント化と対象セグメントの決定、自社の強みなどをベースにさらに精緻化していきます。
シナジーとリスクマネジメントの検討も行います。シナジーは多角化戦略を採る場合に特に重要です。多角化戦略は「新製品を新規市場に」なので暗中模索。できるだけ自社の既存の経営要素から活かせるものを見つけ出しておくべきだからです。リスクは、以下のようなものを考え、対策を練っておきます。
- 市場規模を見誤るリスク
- 事業展開が遅れるリスク
- 大手資本が参入するリスク
- 事業拡大やビジネスモデル固有の資金繰りリスク
- 資源価格の高騰リスク
- 為替変動リスク
数値計画
- 目標損益計算書
- 売上計画
- 売上原価
- 人件費
- 販管費
- 損益分岐点分析
- キャッシュフロー計算書
事業の枠組み作りでも、目標設定で売上や利益について検討しました。数値計画ではそれをさらに精緻化していきます。
目標とするべき損益計算書を作るイメージです。売上→利益→キャッシュフローの順に計画します。どれぐらい売れるのか、原価構成はどのようなものでいくら利益が出るのか。ここで損益分岐点分析も行います。新規事業は一般的に当初は赤字スタートであり、まず単年度での黒字化、そして累積損失を解消して会社全体の利益に貢献していくという流れになります。よって、累積損失の解消に至るまで資金繰りができるのかを分析することは重要です。
数値計画はビジネスモデルの検算ともいえます。なので、数値計画でどうやっても黒字化しないようなら、そのビジネスモデルは駄目なのでしょう。また、数値計画上は黒字になっているけれども、ビジネスモデルと整合していなければ、意味がありません。さらに数値計画に甘い見通しが入っていないか、逆に厳しすぎる見通しもよくありません。ビジネスモデルと整合性がとれ、現実的な数値計画ができれば、事業計画書は説得力のあるものとなるでしょう。