CRM基礎講座の第2回です。最初にCPOについて説明します。CPOはCost Per Orderの略で、特定の一人の顧客を獲得するためにかかったコストのことです。この新しい顧客を獲得するコストであるCPOと、既存の顧客を維持するためにかかるコストを比較すると、CPOの方が4~5倍かかると言われています。つまり、新規顧客の獲得に躍起になるよりは、既存の顧客を維持した方がコストが抑えられ利益につながるということです。
自分が何かのお店を経営していると想像してください。一人の見知らぬお客さんがふらふらとお店に入ってきて、何か買ってくれたとします。嬉しいですね。しかし、そのお客さんはなぜお店に入ってきたのでしょう。それは、チラシを撒いたり、初めてのお客さん限定の値引きサービスをしたり、場合によってはテレビCMをやったからかもしれません。結構膨大なコスト(CPO)がかかっているわけです。いわゆる一見客であるこのお客さんは、お店の経営者からしてみると、実はあまり嬉しくないお客さんかもしれません。
しかし、一見客だからといってサービスをないがしろにしていると、そのお客さんは二度とお店に来てくれません。本当の一見客として終わってしまうわけです。そうすると、また新しい一見客を連れてくるために膨大なコストをかける必要が出てきます。これでは、いつまでたっても利益なんて出てきません。困った問題です。だから、一見客にも出来るだけのサービスをします。そのお客さんがまたお店に来てくれるための投資です。一見客をリピート客に変えようとするわけです。これを顧客の育成といいます。(自分が顧客の立場で、あぁ自分は育成されるのかと思うとあまり気分がよい話ではありません。少なくとも私はそうです。ここでは説明の都合上、育成されることにしておきましょう。)
幸い一見客がリピート客になってくれたら、それで終わりでしょうか。そんなことはありません。リピート客は顧客育成の第一歩です。リピート客がそのお店の良さを知るようになると支持者というステージに上がります。さらにこのお店がないと駄目だ!というほどの信奉者になり、最終的にはパートナーになります。パートナーともなると、他のお客さんを連れてきたり、お店の商品やサービスに建設的な意見を言ったり、お店自体の成長に貢献してくれるようになるのです。
見込み客(一見客の前ステージで、見込み客から一見客に昇格させるためのコストはCPOの一部となります)からパートナーに至るステージの分類の方法はいろいろあります。ここに挙げたのはその一例に過ぎません。どのような分類をするにせよ、重要なのは特定の顧客と長く深い関係を構築し、より多くの利益をもたらしてくれる顧客になってもらおうということです。ここでいう利益は直接的な金銭上の利益はもちろんですが、新しい顧客を連れてきてくれる、商品・サービスの成長に寄与してくれるといった間接的な利益を含みます。
顧客の維持・育成コストはCPOの数分の1です。それでお店に大きな利益をもたらす顧客になってくれるようになるのです。育成し関係を維持している優良顧客は、お店にとっては非常に重要な資産です。優良顧客という安定した資産があれば新規顧客獲得の必要性が小さくなります。その結果CPOの最小化が実現して利益率を向上させることが出来るのです。