たしか1994年とかそれくらいの頃、テレビ朝日でインターネット特番みたいなのをやっていて、メンバーも雰囲気もすっかりニュースステーションで、アップルが口も物も金も出す・・・といった感じの番組でした。私はワクワク・ドキドキしながら見ていました。
その番組に現れたピーター・ガブリエルというアーティストが、「これから何をしたいか?」のような久米宏の質問に「人々に経験を与えられるような仕事をしたい」と答えていました。彼に答えは、当時の私にはよく分かりませんでしたし、久米宏もあんまり理解しているような素振りではなかったような気がします。
それが最近、分かったような気がしています。6~7年もかかりましたが。人々はもう物は欲しくないんじゃないかと。人々は経験が欲しいんじゃないかと思うのです。テレビもあるし冷蔵庫もあるし・・・だから、そういうものは揃ってる。で、ピーター・ガブリエルだったら人々に作品を作るような経験を与えられるマルチメディア作品を当時、作っていたらしい。作り方を教えて、素材を与えて、あとは自分のクリエイティビティを発揮しましょうと。きっと、そういう経験を人々は求めているんじゃなかろうか。今でもね。
例えば、今、考えているんだけど、INOKS.NETにはオンライン書店がある。この書店は、今のところ、あまり個性がなくて、もう少し何かをやろうと考えています。個性を出して、ちょうどセレクトショップのような感じにしようと。で、これは書店なんだけど、ビジネスのところはAmazon.co.jpがやってくれてるわけで、私は書店の経験だけをやっている。「本屋さんごっこ」を体験しているわけです。本屋さんとしての店作りは、楽しいわけです。でも、本を仕入れて、運んで、決済して・・・という経営は、必ずしも楽しくない。経営という経験自体は楽しいと思うんだけどね。
そういう経験欲求を、今まではシムシティのようなゲームで満たしていたんだと思います。ゲームだったら市長にもなるし、遊園地も経営できる。で、その本屋版で現実版(決してシミュレーションではない!)が、Amazon.co.jpとかでやっていることですね。つまり、店作りと経営・流通を完全に分離する、こうした形は面白いし、今後、主流になったら楽しくなると思いませんか。