私は3年ほど前からTech Garden Schoolの講師として、多くのIT業界ではない方々にプログラミングを教えてきました。
それは、スクール代表者の方の思いと共鳴するところがあったからこそ続けられたのですが、最初の頃はITエンジニアを目指すわけでもないのに、なぜ必要なのだろう?と思っていたこともあります。
IT経営
去年、ITコーディネータとしての認定を受けました。ITコーディネータには「IT経営を実現するプロフェッショナル」というキャッチフレーズがあります。IT経営って何のことでしょう。
経済産業省の定義では、IT経営とは下記のようなことを指します。
IT投資本来の効果を享受するためには、目的なく、単に現業をIT化するだけでは、不十分であり、自社のビジネスモデルを再確認したうえで、経営の視点を得ながら、業務とITとの橋渡しを行っていくことが重要です。
このような、経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すことを「IT経営」と定義します。多くの企業では、経営、現業及びITの各領域が有機的連携をしない、若しくは、現業とITは好循環を維持しているが経営との間が分断している、などの悩みに直面しています。
経営とITの好循環確立に成功した企業を見ると、赤字化・合併等の事象を引き金に経営主導で取組を始めた例が多くなっています。しかし、引き金となる材料を自発的に得られる企業は現実的には少なく、全体の底上げに向けた対策が急務です。
IT経営という言葉自体は、2000年頃から使われているものなので、トレンドに照らし合わせると少々古さを感じさせるところはあります。しかし、言わんとしていること自体はいまでも充分通用するものであり、現時点でも企業の競争力を強めるための鍵を握っている概念と思います。
現代のIT経営に必須なIoT的発想
歴史を遡ると、ITが企業経営に活用され始めた初期から、ITは「効率化」のための道具でした。業務を効率化しコストを削減する、「守り」の道具としてのITです。
もちろん、そうした用途はいまでもITの主要用途であり、相変わらず必要な仕組みであるといえます。
しかし、徐々に新たなサービスを開発する、売上を上げるための「攻め」の道具としてのITが認識されていきます。顕著なのはインターネットの普及とともに勃興したオンラインショップなどの電子商取引の分野です。最近爆発的に増加しているWebメディアや動画サイトも、新聞やテレビが主戦場だったメディアのIT化であり、ITを「攻め」に使った実例といえるでしょう。
とはいえ、やはりITを専業にした企業のものであり、それ以外の企業への広がりは(特に営業用Webサイトといったマーケティング以外の分野では)限定的だったといえます。
ここに、IoTが登場します。IoTは「モノのインターネット」と説明されますが、その真相はいままでの常識ではITと関係なさそうに見えていた分野をITの世界に引き込むツールといえます。
- 自動車の運転は人間の仕事でITは関係なかったものが、自動運転という技術でITの世界に引き込まれています。
- お客様の応対も、まさに人間だからこそできる仕事でしたが、Pepperや人工知能で応対できる分野が広がっています。
- 投資判断も、人工知能や機械学習によって、人間が行う投資活動より好成績を残すケースが出てきています。
- 家電のスイッチの入り切り、洗濯物の折りたたみ、食事の調理といったことも、ロボットが行うことができるようになり、ITが自動制御する時代になりそうです。
あなたが携わる仕事に、目、耳、鼻に相当するセンサーが入り、手や口に相当するロボットが現れ、それらが人工知能につながったとき、その仕事はどのように変化するでしょうか。
それによって、ただ、あなたが不要になるだけという変化を想像するかもしれません。それもまたあり得る話でしょう。しかし、そうではなくて、そこにあなたも一緒に存在することで、どのようにより良い製品、サービスを生み出すことができるかという考え方をするほうが前向きであり建設的です。そこにイノベーションがあるのではないでしょうか。
必要なプログラミング的発想
プログラミングに代表されるITスキルの必要性はここにあります。
あなたの仕事を誰よりも知っているのは、あなた自身です。決して、ITやロボットに精通した専門家ではありません。ならば、あなた自身があなたの仕事でイノベーションを起こすために、プログラミング的な発想をできるようになる必要があるのではないでしょうか。
だからこそ、ITエンジニアになるわけでもないのにプログラミングを学ぶ必要があり、それが競争力の源泉になるのではないかと思うのです。
セミナーを開催します
1月23日と30日にはTech Garden Schoolの主催で「1時間でITのトレンドを理解する」という(仰々しく名付けた・・・)セミナーを行います。なにしろ1時間しかないので、一つ一つのキーワードを説明するような時間はないし、そんな用語辞典にしかならないような話が求められているわけでもないでしょう。
そこで、上記のようなことを念頭に、昨今のITトレンドを、まず「森」として理解していただき、それをどうやって活用していくのかといった視点でお話ししたいと考えています。
その上で、だったらプログラミングを少し学んでみよう、学んだ知識を少し実際の仕事に活かしてみよう(そのためのIT顧問としてのご支援も行っています)と思っていただければ幸いです。