Web 2.0で個人が復権する

最近、コンピュータの価値とは何か?を探るために、昔のコンピュータ関連書籍を読んでいます。
例えば、「パソコン創世記」であり、「ワークステーション原典」です。

特に、パソコン創世記は、TK-80からPC-9801あたりの記述であり、正にコンピュータ自体がホビーであった頃のことが語られています。
この頃の日本のパソコン業界の主役は、日本電気です。
そこでは、日本電気のような大企業が、一介の個人に過ぎないマニアックな人々や、出来立てのベンチャー企業に刺激を受け、また、それを頼りにしながら、パソコンを作って来た姿が描かれています。
海外もそうです。Appleは2人のスティーブが起こしたベンチャーですし、IBMはPCを作る時に、徹底した仕様のオープン化を行い、IBM独占をやらなかったのです。

私個人のことを言えば、最初に買ったパソコンはMSX(中古)であり、その後はPC-9801N(これも中古)です。
まだまだ、コンピュータ自体がマニアックなホビーであった頃だと思います。
しかし、パソコンが大衆化した今、コンピュータがホビーでなくなったような気がするのです。
昔は、「自分のパソコンを持ちたい」から始まって、「パソコンで何をしたいかを決めておきましょう(そうすれば、買うことの罪悪感を感じずにすみます)」などというアドバイスがされていたのです。
それが、「年賀状を作りたい」とか「インターネットがしたい」とか「この時代、パソコンくらい出来ないと」などという、ある意味では正当な、しかしホビーとしては不純な動機で、パソコンが購入されるようになりました。

こうしたことは、パソコンが高性能化し(個人が付け入る隙を与えないほど)、作り付けのアプリケーションが整備され、駆けつけサポート(by KDDI)とマウスクリックでOKのインターネット(大抵、インターネットとはWebです)が出来るようになり、マニアックな要素がかき消されていったため、起きたのです。
これは、コンピュータ自体をホビーにしたい個人には、悲しい出来事だったと思います。

再び、私自身の話をすると、あれほど環境整備マニアで、Windowsの再インストールを何度やったか分からないほどの私が、config.sysを何度書き換えては再起動してみたか分からない私が、今、私のThinkPadに入れてあるWindowsXPの再インストールを1年以上もやっていないのです。
つまり、熱が醒めたような状態になったのです。

パソコンを使うということ自体がホビーにならなくなってから、自作パソコンに走った人もいるでしょう。
私は、PDAに走りました。PDAは、個人の手に負える小さなコンピュータであり、そこには使うこと自体を楽しめるホビーの要素があったのです。

今、Web 2.0には、再びホビーの要素が生まれたような気がしています。
マーケティング用語としてのWeb 2.0は、その辺に置いておくことにしましょう。(いつか、取り出すこともあるでしょう。)
Web 2.0は、個人の能力を受け入れます。大企業のお仕着せではないのです。
たしかに、Web 2.0企業は大企業化しています。多くの人が大企業が提供する無料ブログサービスを使って、Web 2.0へ参入しています。
それはそれとして、受け入れましょう。参入する人が増えることは、可能性が増えることでもあります。再び、大企業が個人を阻害するようなことがなければ、それで良いのです。

Web 2.0で言う「ロングテール」や「群衆の英知」は個人(や小集団、以下同)の成果を尊重します。
「マッシュアップ」は個人の使い勝手に合わせた、サービスのカスタマイズを可能にします。
技術面でマッシュアップの根底にある、「ライトウェイトな開発」の重視は、参入障壁を低くし、個人の参入を容易にします。

Web 2.0は、コンピューティングにおける個人の復権でもあるのです。

この記事を書いた人

井上 研一

経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア/ブロガー。
井上研一事務所代表、株式会社ビビンコ代表取締役、一般社団法人ITC-Pro東京理事。
北九州市出身、横浜市在住。 AIやIoTに強いITコーディネータとして活動中。著書に「初めてのWatson」、「ワトソンで体感する人工知能」など。セミナーや研修講師での登壇も多数。

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