SI業界について、最近思っていること

2007年10月5日に、はてなの人力検索で回答として書いた文章を、2007年10月15日再掲。

この業界が抱える現時点での問題点と解決策

  • 人海戦術がすべてなところ。
  • その人が出した成果より、働いた時間がお金になるところ。
  • 偽装請負が通常であるところ。
  • 技術力の低い人でも悠々と勤まってしまうところ。

技術力が低くても勤まってしまいますから、必然、品質が落ちます。納期に間に合わなくなります。納期が間に合わないとお金がもらえなくなるので品質はあきらめます。納期に間に合わせるために人を集めます。たいてい、技術力の低い人が集まってきます。必然、品質が…の無限ループに陥っているプロジェクトが多いんですね。製造業としての基本がなっていないのです。例えば、家を建てるときに、「窓は開きません」と大工さんに言われたらどう思うか。当然、怒るでしょうが、「いや、ちゃんと外は見えますし、換気は換気扇を回すことで運用してください」なんてなことを言う。そういうことが日常茶飯事の製造業です。

解決策はとても難しい。地道に技術力を上げていくしかないのではないでしょうか。そのためには、安易に下請け・派遣を使わず、顧客と直接取引している会社が、自分たちでちゃんと作ることを徹底するべきです。一次請け→二次請け→三次請け…と続く構造が、上流での技術力<ビジネスの傾向、下流での責任感欠如を招いています。

この業界の人口をあまり増やすべきではありません。少数精鋭で、本当に出来る技術者だけでやるべきです。真の生産性向上とは、どんな人でも出来るようにすることではなく、本当に出来る人が数人だけでちゃんと作れるようにすることだと思います。生産性向上とは(アマチュア技術者にとって)簡単にすることであるとの履き違えが見受けられます。

この業界が将来発生するであろう問題点と解決策

IT がますますインフラになることによって、何より信頼性が重要になってきます。水道や電気と同じレベルの信頼性が求められます。しかし、現時点でそれだけの信頼性を維持する品質は提供できていません。訴訟が頻発する恐れがあります。社会的なバッシングにさらされる危機があります。
解決策は、同上。

この業界の将来性

理想的にはワーキングプアがいっぱいいる業界より、人口は少ないけれども一人一人はプロフェッショナルであり、高給取りであり、社会からの評価も高い…という業界になって欲しいと思います。
いずれにせよ、この業界が、世の中から消え去ることはありません。むしろ、ますますインフラになることで重要になっていきます。ただし、ソフトウェア開発よりは運用の方が、将来性は高いかもしれません。

この業界に求められる人間性

技術者としてのプライドを持てる人、そのために勉強を続けられる人、これが重要です。
あと、物販とかそういうサービス業と比べると、顧客が実際に自分たちの提供したもので喜んでいるシチュエーションに遭遇しづらいため(特にソフトウェア開発の場合)、自分たちの作っているものが役に立っているのだ!ということを想像できる力は、あったほうが良いと思います。

ん~、自分は、この業界に求められているのだろうか…と、回答を書きながら思った。(by 技術力に乏しいSE)

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。