あなたが年収1000万円稼げない理由。

あまり、こう、即物的なことは好きではないのですが、実に即物的なタイトルの本を読んでみました。
中身は、これといって即物的なことはありませんでした。

最初に断っておくが、この本はただ単に年収1000万円を稼ぐためのノウハウを紹介するものではないし、この本を読んだからといって、あなたの年収がすぐに1000万円になるわけではない。
年収1000万円という、ある種のメルクマールを掲げ、それにかなうだけの能力やスキルを身につけた、希少かつ貴重な人材になるための「キャリア・デザインの方法を紹介する本」であることを、覚えておいてほしい。

と、著者の田中和彦さん(リクルートで「週刊ビーイング」などの編集長をされていた方とのこと。)は、その冒頭で警告しています。

「給料氷河期のキャリア・デザイン」の法則を8つ紹介しながら、この本は進んでいきますが、私の印象に残ったものをいくつか取り上げたいと思います。

「あなたにしか頼めない」と言われたことがあるか?

第1章のタイトル。結局のところ、年収は需要と供給で決まるということ。考えてみれば当たり前のことですが、サラリーマンをやっていると、そこになかなか気づかなかったりもするものです。「あなたにしか頼めない」ことがあるのなら(もちろん、それに市場価値があるとして)、当然、年収は上がります。

「あなたにしか頼めない」というのは、それが世界中であなただけとか、日本中であなただけというわけでは、必ずしもありません。それに越したことはないのでしょうが。例えば、ある業界では普通のことでも、別の業界に行けば貴重な能力の持ち主として見られた。同じ業界でも、東京の普通が地方の普通ではないかもしれない。それで「あなたにしか頼めない」のなら、それで年収は上がるということです。

転職しなくても定期的に職務経歴書をアップデートしよう

まずは自分自身の棚卸しが重要ということでしょう。よく言われることですが、自分の市場価値を冷静に考えておくことは必要です。
ダブルスキル、トリプルスキルが、複合的に自分の市場価値を高めることがあります。スキルアップを考えるのなら、1+1=10にする考え方が必要だといいます。

初対面で相手にどれくらい理解してもらえるかが勝負

自己紹介がいかに大切かということです。初対面の相手に、自分をいかに理解してもらえるか。ライフハックでは、「自分と友達になるとこういうメリットがあります」ということを発表しあうアイディアもあるようです。
ビジネスは1人でやるものではありませんから、こうした努力はとても大切です。それと同時に、自己紹介がきちんとできるということは、それだけ自己認識がしっかりしているということでもあるはずです。

納期のない夢は、絵に描いた餅より価値がない

これも、あちこちで言われていることですが、あちこちで言われるということは、それだけ重要なことでもあるということ。
長期的な展望はどうしても必要なことだと思います。そして、その長期的な展望には、できるだけ明確な日付を書くこと…。というと、有名な本のタイトルそのままになってしまいそうですが。

最後に、これは、著者があるベンチャー企業の社長に聞いた話とのことですが、採用試験の面接のフレームワークが紹介されています。

質問1 「あなたの夢は何ですか?」
 →答えられないとアウト。

質問2 「その夢は、何年後に実現できますか?」
 →答えられないとアウト。

質問3 「3年以内にその夢を実現するとしたら、何が必要になりますか?」
 →答えられないとアウト。

質問4 「では、そのために今年何をしようと思っていますか?そして、それは、うちの会社で働くことに合致しますか?」
 →きちんと答えられたら合格。

これは、非常に明快です。採用面接でなくとも、常に自分自身に問いかけたい質問です。(「うちの会社で~」は、ケースバイケースですが。)

全体的に、よく言われていることをまとめたような本ではありますが、コンパクトにまとまっているし、読みやすいので、いろいろな人に最初にオススメできるキャリア・デザイン本ではないでしょうか。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。