派遣法の見直しでマージンが明らかに

asahi.com:派遣料金の公開を要請へ 厚労省、マージン明らかに: “労働者派遣法の見直しを検討している厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会は29日、労働者を派遣した際に派遣元が派遣先から受け取っている派遣料金の情報公開を進めることで一致した。厚労省は今後、派遣法に基づく指針を改正し、派遣会社に対して公開を要請する規定を盛り込む方向で検討する。労働者側にとってマージン(派遣手数料)がわかる意義がある。”

記事によると、当初はマージンの上限を設ける方向で検討されていたようですが、それは経営者の抵抗が強く断念。引用したように派遣料金の公開によって、マージンが分かるようにするということのようです。
ただ、「公開を要請する規定」とのことであり、必ず公開しなければならないわけではないわけです。罰則云々どころか、せいぜい、努力義務といったところでしょうか。

ただ、派遣法に基づく指針の改正であることから、請負や委任契約を個人で受けているような場合には、適用されません。それはマージン云々というよりも、偽装請負の問題が先に立ちますから、まず、そちらを片付けるべきということではあります。
しかし、SI業界の場合は、偽装請負の実体は相当にあり、会社対会社の場合は別としても、会社対個人の偽装請負は、事実上派遣と同様であり、やはりマージンの開示が望ましいと思います。(個人事業主を相手にした案件紹介サービスを各社が提供していますが、そういうところはマージンが開示されていることがウリ になっているケースが多いですね。いや、だから、偽装請負としか…。)

他の業界のことは分かりませんが、SI業界の場合は、1社通過で2割がマージンというのが個人的な経験です。当たらずとも遠からずだと思いますが、だいたいその辺で横並びだとすれば、マージンが公開されても「ふーん」で終わりになりそう。一個人として年収を上げるのなら、マージンを比べるより、プライマリーベンダーからの距離(つまり、マージンを搾取している会社が何社挟まっているか)を見て、少しでも距離を短くする方が至当。その辺が、まさにゼネコン業界なわけです。

いずれにせよ、マージンの公開というのは、派遣会社にとっては営業上の秘密でもあることから、実現すればかなり画期的といえそうです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。