多品種少量消費時代の卸売業者

一般消費者からはなかなか姿が見えない卸売業者。流通革命で中抜きが起き、卸売業は衰退するといわれると、そんなもんかと思ってしまうところですが、現状はそうでもないようです。

卸売業の機能は、メーカーから商品を仕入れて、小売店に卸すことです。無数にあるメーカーと無数にある小売店が直接取引することは難しく、卸売業者が間に入って、一旦とりまとめる必要があるわけです。

さらに、小売店は商品回転率を高めるために在庫を持つことを嫌います。その一方で、欠品を減らして消費者が買いたいと思ったときに確実に売れるようにしておく必要もあります。そこで、卸売業者が在庫を持つ物流センターを構築することもあります。

窓口問屋制といって、1つの卸売業者が、他の卸売業者の商品を取りまとめて、小売店に卸すこともあります。小売店にとっては、商品が届くたびにやる必要のある検品作業は繁雑な作業なので、窓口問屋から1台のトラックでまとめて商品が届けば、検品作業の効率化が図れるメリットがあります。

今日の日経では、伊藤忠食品の浜口泰三社長の「未納、遅納、誤納をしない正確な商品調達・配送システムは日本に誇れる」という言葉を紹介しています。日本の卸売業はかなりレベルが高いのですね。

卸売業がなくなるといわれた約50年前は少品種大量消費の時代でした。ダイエーなどのGMSがブイブイ言わせている頃です。それが、現在は多品種少量消費の時代。卸売業が変幻自在に姿を変えることで、見直されている時代ということなのでしょう。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。