ものが売れない理由は様々だ。バブル崩壊以後の構造的な要因としてあげられるのは、将来が不安、収入の見通しがよくない、低収入層が増えている、の3つである。不況下の2009年度からは、これに、月額賃金やボーナスが減少しているなどの短期的な収入減少要因が加わっている。さらに、もうひとつ追加したいのが、嫌消費世代が台頭し、影響力を拡大していることである。彼らは、節約すること、待って安くなってから買うということが既定値である。従って、彼らの辞書には「節約疲れ」の言葉はない。買って後悔すること、将来の負担になるリスクは回避しようとする。
引用元: 嫌消費世代 ・・・経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち:アルファルファモザイク.
年明けに1本記事を書いて、それから書いてなかったのでお久しぶりです。
あんまり書くことがなかったというか、ちょこちょこ経済学の勉強してたりとか、そもそもあんまりやる気がなかったりとか、まぁ、いろいろなわけですが。
で、アルファルファモザイクの上記の記事(もとは週刊ダイヤモンドの記事)を読んでいると、ちょうどいま勉強しているマクロ経済学のことが思い浮かびました。
マクロ経済学で消費関数論争について勉強します。ケインズは国民所得が増えるほど、平均消費性向(国民がどれくらい所得を消費に回すか)が減ると言っている、クズネッツは「んなこたーない」と言っている。で、他の経済学者がそれが両立するような理論をいろいろ考え出して論争してたという話です。
デューゼンベリーの相対所得仮説だと、人はそれまでの所得の最大値を念頭に消費に回すから、少し減っても消費を減らさない。それを逆から見ると所得が増えても消費はそれほど増えていないように見える。ただ、長期的にはやっぱり所得が増えると、それまでと同じ割合で消費に回しているねってことらしい。
フリードマンの恒常所得仮説だと、所得を恒常所得と変動所得に分けて、消費は恒常所得がベースになっているという。所得が増えてもしばらくは変動所得と見なされるからそれほど消費に回らない。でも、所得の増えた状態が一定期間以上続くと、恒常所得と見なすようになるので、そうなれば消費も増えるんだと。
モジリアーニとかのライフサイクル仮説だと、消費は生涯所得に影響されると。で、生涯所得は保有資産額+生涯所得収入となって、所得が増えてもしばらくは保有資産額の増加につながらないから、消費がそれほど増えない。保有資産額の増加につながる頃になってから消費も増えてくるってことになる。
つまり、この3説とも、ケインズの言っていることは短期のことで、長期的にはクズネッツが言っているようになるということでは共通しているわけです。
で、話を嫌消費に戻して。
若者が金を使わないというのは、平均消費性向が低いということで、だったら貯蓄が増えているはずですね?っというところを確認したのだけど、記事はその辺に触れてないようなのでパス。(ダイヤモンドの記事では年収は見劣りしないと書いてあるから、所得が低いから消費が少ないのではなく、貯蓄に回しているから消費が少ないのだろうということにしておく。まぁ年収300万円以上が52%いること=見劣りしないのかは別の議論として)
先ほど紹介した3説で興味深いのは、恒常所得仮説やライフサイクル仮説です。どちらも所得が増えるという期待、増えているという実績が得られないと、現実にある程度の所得があっても消費に回らないと言っています。ここで言っている消費につながる所得は可処分所得なので、税や社会保障費が増えるという予測も、消費が増えないという結果につながります。
結局、将来の自分とか日本に、あまり期待を抱いていないし、どちらかというと不安に思っているわけですよね。ここを打開できないと、消費に回らない流れは止まらない。でも、経済学の基本で言えば、消費が減ると、所得は減ることになるので、まさに悪循環。デフレスパイラル。なおさら将来に期待を抱けないことになります。
N’s spirit 消費性向とは 限界消費性向とはによると、日本の消費性向は1990年代前半までは70%前後、2001年~2005年は70~75%前後。アメリカの消費性向は90%を超えるというから、お国柄の違いを感じますが、いずれにせよ日本の消費性向は大きくなっています。平均消費性向 労政時報クラブ 人事・労務の専門情報ポータルサイトによると、2006年以降は徐々に上昇していて、2008年は72.3%というから、やっぱり低下しているわけではありません。若者が嫌消費なだけで、中高齢者層は違うのか?
アルファルファモザイクの記事には、現時点で200を超えるはてブが付いていて、コメントを見てみると、別に嫌消費なんじゃなくて、収入が少ないだけだろ!というのが目立ちます。
どうなんでしょ。