鉄道好きじゃなくても読んで欲しい、水戸岡鋭治の「正しい」鉄道デザイン

私自身は鉄道好きなので、それで買ったのですが、読んでみて思ったこと。西村佳哲さんの本、「自分の仕事をつくる」とか「自分の仕事について考える3日間」などに感銘を受ける人には、是非読んでみて欲しいということです。

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JR九州の特急や新幹線「つばめ」のデザインがいかに秀逸かということを、皆さんはご存じでしょうか?まず駅のホームに滑り込んできた列車の外装に度肝を抜かれ、いざ乗り込んでみると、これが列車の中なのか?ホテルか何かじゃないのか?と、また驚く。

私は九州出身で、ごくたまに地元に帰ると、何よりJR九州の列車に乗ることを楽しみにしています。福岡空港に着いてから地下鉄で博多駅に行き、そこから特急に乗って北九州に。博多駅は日本でいちばん特急が発着する駅なので、次々に斬新な特急が到着し、また出発していく様を見るのが、まず楽しい。

それを全てデザインしたのが、デザイナーの水戸岡鋭治さん。最近、水戸岡さんの本もいくつか出始めているようです。
今回が紹介する「水戸岡鋭治の「正しい」鉄道デザイン」。水戸岡さんにインタビューした内容をライターの渡邉裕之さんがまとめているのですが、あとがきで渡邉さんが書いている文章に、この本のなんたるかが集約されていると思います。

インタビューの最中、「お茶と弁当と菓子をしっかり出すことができたら、デザインの基礎は掴んだことになる」という言葉を水戸岡さんが語りだした時は、思わず心の中で小躍りした。これで水戸岡鋭治の仕事の根幹に触れられたと思ったからである。

水戸岡さんは仕事というものの本質をサービスであると捉えているように思います。水戸岡さんの事務所では、クライアントとの打ち合わせの際に出すお茶、弁当、菓子をアシスタントの方が持ち回りで選んで、出しているそうです。クライアントに対して、どのタイミングで、どういうものを、どうやって出せば良いのか。それを考え抜かねばならないというわけです。そうしたことがちゃんと出来るようになったら、クライアントが求めていることに、しっかり応えられるようになったということ。

こういう信念を持っているからこそ出来る、「正しい」鉄道デザインというわけです。水戸岡さんが鉄道デザインの時に考えているのは、実際のクライアントのであるJR九州ではなく、乗客のこと。例えば、車内の照明は、乗客の女性が美しく見えるようにしているとか、乗客がどこで記念撮影をしてもどの列車に乗ったかをすぐ思い出せるように、車体のあちこちに列車名をデザインしておくとか、そういう話がたくさん出てきます。

一方で、JR九州のサービス精神も凄いと思う。水戸岡さんはプレゼンの時に、「平凡な案」、「他の会社でも頑張れば出来る案」、「他の誰にも出来ない案」を3つ持って行くというのですが、JR九州の歴代4人の社長が皆、「他の誰にも出来ない案」を選ぶという話があります。岡山生まれの水戸岡さんは、それを九州・博多の風土ではないか?と分析しているのですが、九州出身者の私からしても、たしかにそういうところはあるかもしれません。

まずこの本を読んで、一度はJR九州の新幹線や特急に乗ってみましょう!

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。