久々に朝ブログ。去年の今頃は六本木ライブラリーからでしたが、今回は赤坂のタリーズコーヒーから。
情報システム大手が上場企業を対象に、国際会計基準(IFRS)の導入支援サービスを本格化する。NECは2012年度までに、会計の専門家やシステムエンジニアら担当者を現在の5倍の500人に増やす。日立製作所は日立グループ6社の技術やノウハウを持ち寄って支援する。IFRSは15~16年に国内上場企業に強制適用される可能性があり、特需が見込めると判断した。
日本経済新聞 2010/3/12朝刊11面
同欄にてIFRS導入サービスの一例として、下記のマイルストーンが紹介されている。
- 2009~2010年度 開始フェーズ
(IT企業の取り組み、以下同)顧客の会計基準とIFRSを比較 - 2011年度 詳細分析フェーズ
業務や情報システムについて詳細調査を実施 - 2012~2013年度 適用フェーズ1
情報システムなどの移行作業を実施
(2013年度よりIFRSを試験導入) - 2013~2014年度 適用フェーズ2
運用体制を継続的に更新
(2014年度よりIFRSを適用)
IFRS導入において、どのような変化があるか。やはり同欄から。
IFRSと日本の会計基準の大きな違いとして、最終的なもうけを示す純利益に保有株式や海外資産などの価値の変動を加えた「包括利益」を開示する点がある。このほか企業買収に伴う「のれん」が非償却扱いになるなど、企業業績の算定に大きな影響をもたらす。
これを見ると、会計システムだけが対応すれば良いように見える。しかし、Wikipediaでさらに調べてみると、
- 開発費は、日本では発生時費用処理であるが、IFRSでは資産計上
- ファイナンス・リースについて、日本ではリース料総額300万円未満の所有権移転外ファイナンス・リースを賃貸借処理することを認めるが、IFRSではそのような数値基準はない
とあるように、上流の業務システムにも影響が出そうな点がみつかる。一昨年から昨年頃にかけて大手SIerを中心に対応が始まった工事進行基準もIFRS導入の一環だ。(ちょうど私はシステムエンジニアとして、工事進行基準対応のプロジェクトを担当している。工事進行基準に対応したはよいが、IFRS導入でどうなるかという点は一時期大いにぶれた。せっかく対応したのに、IFRS導入で工事進行基準の適用は終わりという話もあった。現在は工事進行基準の適用が認められる方向のようだ。)
IT企業の対応としては、冒頭で挙げたようにNECが傘下のアビームコンサルティングと、日立製作所は日立コンサルティングと、というように、コンサルティング会社がIFRS適用の道筋を示し、SIerがシステム導入するという戦略を進めている。NTTデータも10年度末には担当者を300人程度に、富士通も100人規模に増員するという。
システム対応の考え方としては、IFRSに立ち向かう!~会計理論からかんがえるシステムの話(前編)(1/2):企業のIT・経営・ビジネスをつなぐ情報サイト EnterpriseZine (EZ)で挙げられているように、
- レポーティングだけ
- レポーティング+勘定科目
- レポーティング+勘定科目+業務プロセス
の3段階の対応からどれを選択するかが基本のようだ。つまり、一気に変えてしまうか、最後の帳尻だけ合わせるか、折衷案か。
これを松竹梅で表現したのが、IFRSサービス、包括的IFRS対応ソリューション | アクセンチュアだ。いかにも日本的な松竹梅プレゼンテーションをアクセンチュアがやるというのは面白いが、日本企業の経営者が最も理解しやすい方法でもある。
システムエンジニアとしては、IFRS導入プロジェクトのシステム対応におけるピークは2011~2012年度だろう。勉強しておいた方が良いテーマであることは間違いない。