世界を知る力

寺島実郎さんの「世界を知る力」を読んだ。20万部近く売れているらしい。
寺島さんのことは、テレビ番組のコメンテーターとして登場する人だというくらいの認識だった。最近はラジオをよく聞くので、TOKYO FMで日曜日の朝にやっている「ON THE WAYジャーナル」の人でもある。そのラジオ番組で、この本をことを話していたのを聞いて、買ってみた。

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Amazonのレビューでも、そう書いている人がいたんだけど、この本の中盤までというのは寺島さんにとっては本題ではないのかもしれない。日本人はアメリカから提供された視点でしか世界を見ることが出来ないという指摘は、意味があると思う。実際、この本の中盤までに書かれているいくつかの実例を読むと、不勉強の私としては目から鱗の落ちるような話ばかりだ。
何より重要なのは終盤である。世界を知ることがいかに重要なのか(単なる教養としてではなく生きるために)、「書を捨てずに街に出よう」という提案。
メディアがニュースとして扱うのはあくまで「点」に過ぎず、点を「線」にするには書店(寺島さんは新刊書店より古書店や図書館を勧めている)で本がどのように配置されているかを見て、気になる本を手に取ってみるといったことをする。そして、フィールドワークである。現地の風を受けてみる、現地の人と話してみる。そうした積み重ねが線を「面」にするのではないだろうか。
私はこの本をきっかけにして、この本で実例として紹介されているユダヤ人のことや、歴史に興味を持った。それで、近くの図書館に行ってみてたまたま見つけた「日本人とユダヤ人」と「日本史集中講義」を読んだりしてみた。

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今までの私なら、決して手に取ることはないような本だったから、この2冊の外国人からみた日本人という視点、歴史から見た現代という視点は、実に斬新だった。今まで自分の頭の中にあったこと、考えていたことというのは、実に狭小な視点、浅薄な知識の上に成り立っていたのだということを認めざるを得なかった。もちろん、この2冊で終わりというわけではなく、様々なジャンルに触手を伸ばしていきたいと思うし、フィールドワークのことも考えみたいと思っている。
もう一つ、「世界を知る力」のあとがきに書いてあった「マージナルマン」という考え方に私は痺れた。

マージナルマンとは境界人という意味で、複数の系の境界に立つ生き方という意味である。ひとつの足を帰属する企業・組織に置き、そこでの役割を心を込めて果たしつつ、一方で組織に埋没することなく、もうひとつの足を社会に置き、世界のあり方や社会野中での自分の役割をみつめるという生き方、それをマージナルマンという。

私は、以前から渡部昇一さんの名著「知的生活の方法」にある生き方に憧れを抱いてきた。ただ、知的生活の方法は古い本である。それを現代に展開するとマージナルマンではないだろうかと思ったのだ。そして、知的生活において世界を知る力は必須スキルだ。

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奇しくも私はあと1週間もすれば、4年近くぶりに正社員としてある企業に所属することになる。そこでのあり方こそ、マージナルマンでありたい。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。