静穏保持法の適用を民主党が要請したからといって、それで自民党以下になったというわけではない

2ちゃんねる界隈の騒動をMixClips経由で眺めていると、「民主党、党本部周辺をデモ禁止地域に 衆院議長より要請→指定」というのが出ていた。

どのような議論かを見てみる。1が、

ソースは官報
告示
国会議事堂周辺地域及び外国公館など周辺地域の静穏の保持に関する法律
第三条第一項の規定により、衆院議長の要請があったので、
動向の規定に基づき、次の地域を政党事務所周辺地域として指定する。
名称 民主党本部周辺地域
期間 平成二十二年から平成二十三年十月まで
pdfファイルです
http://kanpou.npb.go.jp/20101020/20101020h05420/20101020h054200007f.html
国会議事堂周辺地域及び外国公館など周辺地域の静穏の保持に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S63/S63HO090.html

という内容でスレを立て、以下「在日政権必死だな」、「デモ禁止とかどこの独裁国家?」とか、そういう民主党非難の論調が並んでいる。

1がソースとして挙げたリンクをたどってみると、たしかにこれは事実らしい。しかし、これで民主党ダメだな・・・となるのはさすがに情弱で2ちゃん脳というやつであって、もう少し調べてみた。

Wikipediaによると「国会議事堂周辺地域及び外国公館など周辺地域の静穏の保持に関する法律」という長い名前の法律(ミクロな内容の法律の名前はたいてい長いのだが)は、一般的には「静穏保持法」と略されているらしい。Googleで検索してみると、長い正式名称では4,280件、静穏保持法では13,200件がヒットした。

そもそもこの法律は、皇民党事件をきっかけに出来たものらしい。やはりWikipediaによると、

皇民党事件(こうみんとうじけん)は自民党の総裁指名に関し、1987年に起こった事件。1992年東京佐川急便事件に絡み、その公判中に明らかになる。“総理誕生に闇勢力が関わった”として問題になった。

という事件だ。1979年生まれの私が8歳の時に起きた事件なので、詳しいことは知らない。ただ、当時「ほめ殺し」という言葉がブームになったのは何となく覚えている。

つまり、もともとは自民党が作った法律ということである。まぁ、民主党が最近作った法律以外は、すべて自民党が作った法律といっても過言ではないわけで、当然といえば当然だ。

静穏保持法は、国会議事堂周辺地域は常時適用されている。外国公館等については外務大臣が期間を定めて指定することが出来る。そして、政党事務所については政党の申出に基づき衆参議長が要請し、総務大臣が期間を定めて指定することになっている。

民主党はこのような現存の法律に基づいて申出→要請を行ったに過ぎない。昨今の尖閣問題や北方領土の問題等から自党を守るためにわざわざ立法したというのなら話は別だが、そうではないのだから、あまりセンセーショナルに取り上げることではない。

ただ、静穏保持法という法律の存在自体に問題があるのではないかとう視点は必要だと思うが。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。