Androidケータイが普通になる日は来ない

今年の2月に、折りたたみ型が出ればAndroidは勝ちだと思うというエントリーを書いた。

今のところ、そういうケータイは出ていない。折りたたみ型と言っているのは、Androidを搭載しているのだけど、スマートフォンというよりケータイという意味。だから、「Androidスマートフォン」じゃなくて、「Androidケータイ」なのだ。

秋冬モデルでついに和製Androidスマートフォンが登場する(XPERIAはソニーエリクソンだけどワールドモデルだし、シャープのIS01はスマートブックだとメーカー自身が言ってるし)。明日発売されるauのIS03が代表的なもので、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信といった、いわゆるガラケー機能が搭載されたスマートフォンだ。

でも、まだAndroidケータイというほどではない。ガラケー機能は載っているが、形はまだスマートフォンだからだ。

今日のクロノス(平日の朝に放送されているTOKYO FMの番組)で、スマートフォンが特集されていた。クロノスのパーソナリティ及びスタッフには、まだスマートフォンユーザがいないらしい。パーソナリティの中西哲生さんはスマートフォンに興味があるらしいのだが、どうもタッチパネルが苦手なのでスマートフォンへの移行に二の足を踏んでいるという。

その特集では、ケータイ界隈では有名な石川温さんが、来年にはスライド式のテンキーを持ったAndroidデバイス(スマートフォン/ケータイ)が出るかもというコメントを寄せていた。春夏モデルあたりだろうか。

タッチパッド+テンキーのガラケーはすでに存在しているから、各種機能(アプリ)の操作はタッチパッドでやって、文字入力はテンキーという操作性は問題ないだろう。Androidはそもそも上下左右の4方向(アプリによっては8方向なども)と押下操作が可能なトラックボールが想定されているから、アプリについても一部の機能は矢印キーと決定キーで実現できる。

こうした、形は完全にガラケーといったAndroidデバイスが出れば、Androidケータイは実現したかのように思う。でも、まだ違う。

それはiモード(EZweb、Yahoo!ケータイ、以下同)がないからだ。iモードメールはついに対応した。しかし、キャリアの動きを見る限り、iモードは対応させる気がないらしい。

キャリアの考え方は、iモードがなくても標準搭載されたブラウザを使えばWebの閲覧は可能だし、スマートフォン向けのサイトを準備するサービスは増えている。キャリアによる決済機能も準備されるから、それで良いではないかということのようだ。

実に技術者的な合理的な考え方で、私も技術者だから納得はする。しかし、その方針ではiモードが培ってきた独自の文化は移行されないということだ。多くのiモードサイトがスマートフォン対応しても、それは必ずスマートフォン文化の中で登場することになるだろう。絵文字や半角文字は消える。テンキー操作も消える。

それが時代の流れだといえば、そのとおりだ。Androidがガラケーの機能と形に近づけば、Androidユーザは増えていくだろう。今までのガラケーのユーザがどんどん移ってくるかもしれない。しかし、そこにあるのはAndroidケータイではなく、やはりAndroidスマートフォンなのだ。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。