株式会社の作り方

会社法が出来たのは平成18年のことですが、それを機に株式会社が作りやすくなりました。仕事人生の長さより会社の寿命は短いと言われる昨今ですから、株式会社の作り方を知っておくのも良いことかもしれません。まぁ、株式会社の作り方よりも、株式会社を作れるような価値を自分の中に築いておくことの方が重要だとは思いますが・・・。

設立の全体像

  1. 定款の作成、認証
  2. 出資の履行
  3. (募集設立の場合)創立総会
  4. 機関の設置
  5. 設立登記

定款とは

株式会社には定款があります。他の法人形態でも定款か定款のようなものは必ずあります。定款とは会社の憲法のようなもので、a.会社の目的、b.商号、c.本店の所在地、d.設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、e.発起人の氏名又は名称及び住所、f.発行可能株式総数は必ず記載する必要があります。この6項目は絶対記載事項と呼ばれ、1項目でも欠けると定款そのものが無効になってしまいます。定款を作ったら公証役場に行って認証を受ける必要があります。f.については認証時には未記載でもOKで、登記までに記載すれば良いことになっています。

出資の履行

株式会社を設立する方法は2つあります。違いは誰から出資を受けるかで、発起人だけが出資する場合は「発起設立」、発起人以外にも出資を求める場合は「募集設立」といいます。募集設立では発起人以外もお金を出しているので創立総会が必要になるなど手順が増えます。サクッと作ってしまいたいなら発起設立ですね。

出資の履行は、端的に言えば代表発起人の個人口座なんかに出資金を振り込みます。会社法が施行されてからは資本金0円の会社も出来るようになりました。しかし、資本金0円では取引先や銀行からの信頼が得られないというので、やはりいくらか資本金を積みたいところです。手元にお金がなくても資本金を作る方法があります。「現物出資」という方法で、手持ちの資産(不動産とか車とか商品在庫とか)を会社の財産にすることで出資されたと見なす制度です。現物出資をするには裁判所が派遣する検査役による検査が必要です。これは例えば200万円の価値しかない土地を1000万円の価値があると偽ったりしないための検査です。ただし、現物出資の総額が500万円以下なら検査役による検査を省略することが出来ます。また、現物出資の目的物が有価証券の場合や、弁護士等の証明を受けた場合は500万円を超える現物出資でも検査役の検査は省略できます。

ちなみに、現物出資をした場合は、その旨を定款に記載しなければなりません。これは変態設立事項というのですが、他にも財産引受け(現物出資の脱法行為になり得る行為)、発起人の報酬や設立費用(無闇に使うと会社の資本金が減る)があって、すべて検査役による検査と定款記載が必要となります。変態設立事項は定款の相対的記載事項であり、記載しなくても定款そのものは有効ですが変態設立行為は無効となります。

出資の履行が終わったら、発起設立では銀行から残高証明書等をもらっておきます。登記の際に、ちゃんと出資金を積みましたよという証明が必要なのです。募集設立では残高証明書では駄目で、払込保管証明というのが必要になります。銀行は払込保管証明を出すと銀行自体が責任を負う部分が出てくるので、厳格な手続の元でしか発行してくれません。やはり募集設立では発起人以外の出資者がいる分だけ大変です。

機関の設置

次は機関の設置です。機関というのは、株主総会とか取締役とか監査役とかいうやつです。会社法では機関設計(株式会社にどういう機関を置くか)の柔軟化が図られていて、20パターンの中から1つ選ぶ必要があります。これは考え出すとなかなか大変なのですが、小さな会社の設立ならだいたい2パターンです。

株主総会+取締役1人
どんな株式会社でも必ず置かねばならないのが株主総会と1人以上の取締役なので、それだけを置くパターンです。自分1人で出資して自分1人で経営するなら、これでOK。株主総会と言っても株主は自分だけだし。
ただ、このパターンでは経営に関する事項のほとんどは株主総会を通さないとやれないのです。株主総会はオールマイティーです。カネを出している者が強いのです。まぁ、自分1人の株主総会なら反対者はいないので良いのですが、株主が増えてくると面倒なことになりがちです。

株主総会+取締役3人+取締役会+監査役1人
だったら、このパターンがおすすめ。取締役会を作ると、株主総会での決定事項を会社法で決められた重要な事項だけに限定できます。ざっくり言えば、年に1回株主総会を開いて、日々のことは取締役会で決めるのです。取締役会を作るには取締役が3人以上必要です。さらに、取締役会を置いた場合は監査役も置く必要があります。これは、所有と経営の分離という観点で言うと、取締役会を置いた場合に経営側の権限が強くなるのでその牽制者が必要になるからです。
取締役会を作ると、そこで代表取締役も選任します。代表取締役にはかなりの権限が集中しますが、会社法上の一定の事項は取締役会で決めなければならず、代表取締役だけで何でも出来るとまでは行きません。(取締役会を作らない場合は、取締役全員が当然に代表取締役となります。)

ちなみに、監査役は業務監査権限と会計監査権限の両方を持ちますが、会計監査権限だけに限定することも可能です。会計監査権限だけの監査役をいわゆる小監査役と呼びます。ふつうの監査役は取締役会への出席義務があるのですが、小監査役はその義務はありません。小監査役は業務監査権限がないので取締役会に出席する意味がないわけです。小監査役は小さな会社で家族に監査役になっている場合などに使われます。他に仕事を抱えている家族を小監査役にして、たまに来てくれればそれで良いというわけです。
細かい話ですが、小監査役だけがいる会社は、会社法上では監査役設置会社になりません。ややこしいですね。

(書き出すときりがないのが機関設計なのですが、監査役を一切置かずに会計参与を置くという方法もあります。これはすべての株式に譲渡制限がかかっている会社のみ採れる方法です。会計参与は税理士がなることが多い役割で、取締役と一緒に会計書類を作ります。公認会計士だけがなる会計監査人とは別物です。会計参与は取締役の仲間、会計監査人は取締役の敵ではもちろんありませんが相対するところにいる人です。)

ところで、発起設立の場合は基本的に発起人=経営者なので、発起人全員が取締役になります。募集設立の場合は創立総会(会社設立前の株主総会のようなもの)を開いて、そこで取締役を選任します。

設立登記

ここまで進んだら、法務局に行って登記をします。これで晴れて法人格を取得できます。

この記事を書いた人

井上 研一

経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア/ブロガー。
井上研一事務所代表、株式会社ビビンコ代表取締役、一般社団法人ITC-Pro東京理事。
北九州市出身、横浜市在住。 AIやIoTに強いITコーディネータとして活動中。著書に「初めてのWatson」、「ワトソンで体感する人工知能」など。セミナーや研修講師での登壇も多数。

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