小さなSIerの経営戦略論その3~具体論

ここまで2回、小さなSIerの経営戦略論を書いてきたのですが、振り返ってみるとあまり小さなSIerに特化した話が出来ていませんでした。

いままで書いてきたことは、以下のようなものです。

  • 企業の最低限の使命はゴーイングコンサーン(企業の継続)にある
  • そのためには限られた経営資源を環境に適合する形で資源展開する必要がある
  • どういう市場で戦うのか、事業ドメインを決める必要がある
  • 事業ドメインは創業者や経営者の想いと、外部環境・内部環境で決める

これを小さなSIerに当てはめてみましょう。

まず、外部環境を分析する必要があります。外部環境は政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Social)、技術(Technology)の4つの分野から検討する(PEST分析といいます)のですが、小さなSIerを取り巻く環境としては、以下のようなものがあります。

  • 業界全体の需給動向はどうか
  • 中国や東南アジアへのアウトソーシングの流れはどの程度進むのか
  • 中国などの新興国市場でのチャンスはあるのか
  • クラウドやソーシャルネットワークといった技術の動向はどうか
  • 顧客企業での内製化の進展はどの程度進むのか
  • セキュリティなど社会からの要請はどの程度求められるのか
  • 既存顧客や、ターゲットとする新規顧客の事業分野に関するPESTはどうか

また、SI業界の業界構造についても考えておくべきです。SI業界は建設業界と同じで、元請と下請のヒエラルキーがしっかり出来ています。その中で、小さなSIerである自社は、どういう位置づけにあるのか。

次回以降に説明することになるであろうコトラーの競争地位別戦略によれば、下請と位置づけてフォロワーとして市場での生存を目標とするのか、独自の技術やサービスでニッチャーとして市場を細分化した上で、その中でのトップを目指すのか。小さなSIerが目指すのは、このどちらかということになります。

どちらの戦略を採るのか。それは上記のような外部環境と、自社の内部環境(顧客との関係、自社が抱える技術者の技術力、自社が会社として持つ技術力やサービス等)から導き出されます。
コトラーによれば、ニッチャーだから良い、フォロワーに甘んじるのはダメとか、そういうことを言っているわけではないことに注意が必要です。フォロワーとして市場で生存していくことも競争に打ち勝ってこそです。

以上、まだ具体論というには足りない部分もありますが、考えてみました。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。