一昨日だかに呑みながらした話が案外好評だったので、ここにも書いておこうかと。
SEのキャリアパスというと、太古の昔から「プログラマ→SE→プロジェクトマネージャ」と決まっている。でも、そんなの嫌だ!と、硬直的なキャリアパスを嫌う人がいて、10年くらい前からそういう人のムーブメントが出来ている。まぁ、私もそのクチなのだけど。
そういうムーブメントも10年経つと、ある意味ステレオタイプな反論になっていて、「硬直的なキャリアパスとそれに対する反論」というのは、SI業界の呑みの席での伝統芸のようになっている。あと、人月商売批判とか、SIerで差配師だよねという話もセットで。
ただ、その伝統芸というのも神通力が薄れてきたというか、十年一昔のようにそればっかり言っていると、思考停止状態に陥ってしまっているだけじゃないの?と、最近の私はそういう受け取り方をするようになった。
だいたい、そのステレオタイプで言われるところの「管理だけやっているプロジェクトマネージャ」というのは、本当に存在するのだろうか。NTTデータとか野村総研みたいな超ビッグ企業のことは知らないけれども、本当にどうなのだろう?まぁ、大手コンサルティング会社あたりは、大卒の子を3年くらいプログラマをやらせたら、すぐにコンサルタントと名乗らせたりするので、そういうこともあるのかもしれない。
それから、SEというのも、大卒の子が営業やるかSEやるかくらいで入ってくる職種なので、Software EngineeringもしくはSystem Engineeringを知らずに、何年かSEを名乗っていても、そういう技術的なことには触れずに来てたりするSEの皆さんも一定数存在する。
そんな現状なので、管理だけのプロジェクトマネージャとか、エンジニアリングを知らないSEに対して、何か技術的な課題を与えると、いろいろググったりして、一つの解決策を見つけ出す。まぁ、解決策は出しているのだから、それでいいじゃん!と言われてしまうかもしれないが、もちろん、それではダメなわけだ。なぜかって?それは、この先を読んで欲しい。
一方で、例の硬直的なキャリアパスを毛嫌いしている技術志向のSEもいる。彼はそれなりに勉強をしていて、エンジニアリングも知っているのかもしれない。だから、技術的な課題に対して、いくつかの解決策を提示することが出来る。素晴らしい!でも、彼は評価されない。技術的興味の帰結としては複数の解決策を出せることは優秀だが、仕事というものは策だけ出してもダメなのであり、実際に解決まで持って行かないといけないからだ。この点で、先の一つの解決策だけ出す人たちは評価される。その人たちにとっての解決策は一つであり、それを実行するしか道がなく、とりあえずの成果が出せるからだ。
でも、本当に価値のある仕事をするSEなら、複数の解決策を出した後で、ベストな一つを選べる。そして実行できるだろう。ぱっと見の評価は、最初に上げた一つだけの解決策を見つけて実行する人と変わらない。どちらも、一つの方法を選んで実行したからだ。しかし、長い目で見れば考えた解決策が一つか複数かの違いは確実に出てくる。そこで出てくる差こそ、SEとしての能力の差なのだと思う。
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もう一つ話がある。それは、これからのSI業界がどこに向かっていくかという話だ。このブログでも何度か書いた話だが、私はこれからのSI業界はオフショア、クラウド、内製化の3つが鍵を握っていると考えている。クラウドはSaaSかIaaS(もしくはPaaS)かでSI業界にとってのインパクトは変わってくる。IaaSやPaaSなら、SI業界にとっては機会である。一方、確実にSI業界にインパクトを与えるのはオフショアと内製化だ。
オフショアは既にブームが去って定着した感があるが、日本の少子高齢化やTPPなどの労働市場を含めた自由経済圏の進展によっては、さらなるオフショアや海外SIerの進出、外国人エンジニアの日本の労働市場への参入が考えられる。内製化はエンジニアにとっては所属する会社が変わるだけであるが、SIerという外部の人間であることに意義を感じているSEにとっては脅威となる。
内製化が進展したときに外部のSEとして何が出来るだろうか。それは、高度な技術力と経営・管理能力の両方を持ったSEがコンサルタント的役回りで内製プロジェクトに参画することだと思う。逆に、そうでないと外部のSEを雇う意味がない。
つまり、そういうSEというのは、先に挙げた、「複数の解決策を出し、その中からベストな一つを選択できる」SEである。複数の解決策を出すには高度な技術力が必要である。そして、ベストな一つを選択するには経営・管理能力が必要だ。大概の情報システムは企業の経営のために開発されているのだから、経営的視野のないSEは選択基準を持たないに等しい。
そういうSEこそが真のSEであり、もしかしたら、そういう人をアーキテクトというのかもしれないね。と、まぁ、そういう話だ。