ITProに上がっていたWatsonの活用事例から、2つ取り上げてみましょう。
Watsonでサイバー攻撃を分析、新種の防御サービス続々
6月22日のITProに上がっていた事例。
論文などで集めたセキュリティに関する非構造化データは、「セキュリティに関する全ての情報の8割を占める」(最高情報セキュリティ責任者を務める志済聡子セキュリティー事業本部長執行役員)。
データを学習し、攻撃同士の関連性や兆候などをWatson for Cyber Securityがインテリジェンスとして導き出す。攻撃を未然に防止できるうえ、攻撃を受けた時に打つべき手がすぐに分かるようになるという。「セキュリティ技術者が数日から数週間かかっていたインシデント対応の手間が、数分から数時間に短縮できる」(志済氏)。
IBMとCisco、Watsonベースの協業支援ソリューションを共同開発へ
7月1日のITProに上がっていた事例。
米IBMは現地時間2016年6月30日、コグニティブコンピューティング技術「Watson」を活用した米Ciscoとの提携を発表した。ナレッジワーカーの協業を支援するクラウドベースのツールやアプリケーションを共同で開発する。
Watsonの能力を利用し、あらゆるタイプのデータを分析してユーザーが的確な洞察を得られるようにする。従業員の個々の役割、過去の作業パターン、現在の担当といった要素に基づいて必要なツール、アプリケーション、ドキュメントに即座にアクセスできるようにする。
IBMの発表資料はこちら。
Watsonの機能がすべてAPI化されているわけではない
いずれも、Watsonが既存の文書、データから知見を得て、その知見を未来に当てはめようというソリューションです。
Watson for Cyber Securityは、いろいろある「Watson for …」の新種。他には、医療の分野で腫瘍の治療を行う医師をサポートするWatson for Oncologyや、新しい治療薬を人間で試す治験の対象者をマッチングするWatson for Clinical Trail Matchingなどがあります。
Watsonの一般的な機能はIBMのクラウドサービスであるBluemix上でAPIとして提供されているため、ITエンジニアであれば簡単に試すことができるようになっています。
しかし、それはWatsonのすべての機能ではありません。Watsonのすべての機能を活用しようとするならば、IBMのコンサルティングサービスを受ける必要があり、かなり高額な料金を支払う必要があります。
そこでできあがったソリューションを汎化したものが、Watson for …で登場するのではないかと思います。で、さらに汎化して部品化できれば、BluemixにAPIとして登場する。(この数ヶ月、Watsonを追っかけてみた結果として、そういうことなのだろうと思います。)
というわけで、各種メディアでWatsonの活用事例が上がっているからといって、それをBluemix上のAPIで同じように実現できるかというと、そういうわけではないということには注意が必要です。
でも、APIでできることもある
Ciscoとの提携の事例はどうでしょうか。こちらは、提携の発表なので具体的なことがまだ見えないのですが、Bluemix上のAPIでできそうなネタも見えます。(わざわざCiscoと提携するのだから、公開されているAPI以外の機能も使うと思いますが・・・。)
たとえば、従業員個々の性格や活動時間帯はPersonal InsightsというAPIを使って分析することができます。必要なツール、アプリケーション、ドキュメントの選択はNatural Language Classifier(NLC)が使えるかも知れません。
また、既存のドキュメントの解析や検索は、Document Conversion(DoC)やRetrieve and Rank(R&R)の活用が考えられます。
ここに挙げたすべてのAPIは日本語にも対応していますし、APIの組み合わせで、人工知能を活用したいろいろなシステムを組み上げることができるのは、やはりWatsonの魅力です。