今日(10月27日)の日本経済新聞朝刊などで「米IBM、AI「ワトソン」無料に アマゾンに対抗」という記事が出ています。昨日は速報も出たみたいです。
米IBMは11月から主力製品である人工知能(AI)「ワトソン」の無料提供に踏み切る。企業などは翻訳や性格分析など6つの基本機能を期間の制限なく世界中で利用できるようになる。米グーグルが画像認識に強いAIで先行するが、IBMは汎用性の高い基盤システムとして業界標準化を目指す。無料にすることで開発者の裾野が広がり、AI活用の動きが産業界で加速しそうだ。
拙著「初めてのWatson」や、「ワトソンで体感する人工知能」でも書きましたが、Watsonはもともと無料枠が提供されていて、IBMのクラウドサービスであるBluemixにユーザ登録して最初の30日間はWatsonを含むすべてのサービスが無料、その後も一定の無料枠があります。そのため、実験レベルのことであれば、ずっと無料でWatsonを使い続けることができるわけです。
と言うことを踏まえると、同記事の、
基本的なサービスを無料で提供することで顧客の裾野を拡大し、有料サービスに導く「フリーミアム」と呼ばれるビジネスモデルを採用する。ワトソンのように汎用性の高いAIの基本機能を無期限で無償化するのは初めて。
これまでもIBMはワトソンを無料で試験提供してきたが無料期間は3カ月間に限られていた。今回、無料で利用できる期間を無制限とすることで、世界各国の企業や個人が自由に使えるようになる。
という言及は、さっぱり分からないわけです。そもそも、いままでの無料期間だったという3か月間というのはどのサービスのことなのか?たしかに、IBMのサービスは価格がよく分からないことが多くて、例えばDSXことData Science Experienceはしばらく、何が無料でどこから有料か?といったことが分からなかったりもしました。
また、IBMはWatsonと名の付くサービスをいろいろ提供しているので、もしかしたらこの記事に書いてあるのは「初めてのWatson」などで取り上げているWatson APIではないのかもしれない・・・。(たぶん、そんなこともないと思うけど。)
米IBMは、ワトソンの「会話」「翻訳」「文章を基にした性格分析」「対話を通じた意思決定支援」「文章を基に感情や社交性を判断」など6つの基本機能を無料で提供する。従来は最低で数百万円程度かかるため導入をためらう企業が多かった。
さらに、この部分については、たぶん、
- 会話:Conversation
- 翻訳:Language Translator(日本語未対応)
- 文章を基にした性格分析:Personality Insights
- 対話を通じた意思決定支援:???(Discoveryかな?)
- 文章を基に感情や社交性を判断:これもPersonality Insightsでは??
というようにWatson APIに当てはまるので、やっぱりそうだろうと思うのですが、もしかしたら???な機能もあるので、何か新しいサービスか何かが出てくるのかもしれない。
それと、「従来は最低で数百万円程度」というのはちょっと怪しくて、数百万円というのが何に対する料金か分かりませんが、実際に私のお客様は月額50万円程度で常時50人程度が使用するシステムの中でWatsonを使っています。導入費用という観点でも事前のデータ整備などを除いた純粋な開発費用では私の1人月分程度です。
高度な機能を使う場合は有料とする。例えばオペレーターと顧客の通話内容を文章に変換するための「音声の文章変換」や、医療データからがんを発見する「画像認識」などの周辺機能を使う場合は有料とする。一定の情報処理能力を超える場合も課金する。
「音声の文章変換」がSpeech To Textで、「画像認識」はVisual Recognitionですが、これも無料枠あるがな。
(って、医療データからがんを発見したのって画像認識だっけ?という気はするけど。)
ということで、この記事のいう11月になる前から、というかWatson APIが提供され始めた頃から無料で使えるのです!
ただ、それはあくまで実験程度なら・・・なので、中小企業くらいがちょっとしたシステムで使っても無料とかいうのなら、凄いと思いますね。そういう発表になることを期待したいところですが・・・。
まぁ、そんな風に思ってはいるのですが、このニュースが出ることでちょっとWatsonがバズって、無料なら使ってみよう!と思う方が増えれば何よりです。
ちなみに、こちらは去年10月に出した、拙著「初めてのWatson」の、その部分。ここで書いた状態からは、ほぼ変化ないはず。