ゾンビAIを導入しないために考えるべきこと

GigaZineで、AIっぽいが実はAIではない「ゾンビAI」とは?という記事を読みました。

今日は、池袋サンシャインシティの文化会館で、コールセンタージャパン主催の「コンタクトセンターのためのAI入門講座」で講師を務めたので、そこでこの記事に触れさせていただいたのです。

ゾンビAIとは?

ゾンビAIは「AIだという体裁を保っているが、ブラックボックスの中身はまさにロボットのようなもの」だそうで、外部から何かを教え込ませたり導いたりする必要がないシステムです。

この記事での定義は、ゾンビAIは外部から何かを教え込む必要がないロボットとのことで、まぁ、ロボットかどうかはさておき、内部がガッチガチのプログラムで実装されているにも関わらず、振る舞いだけAIっぽいみたいのものを言うのだと思います。

そういうシステムとかソフトウェアプロダクトは確かにあります。AIの展示会に行くとチャットボットの展示が非常に多いのですが、そのうちどれくらいがちゃんとAIなんだろう?というか。WatsonのチャットボットサービスであるAssistantにしても、ユーザーからどのような問いかけが行われたか?という意図理解を行うIntentと呼ばれる部分は自然言語処理のAIと言えますが、その後はIf Thenで書けるルールベースです。

もう一つAI展示会で見かけることが多いRPAも、ルールベースのWebブラウザ操作自動化ツールの域をどの程度超えているのか?

ただ、Watson AssistantのようなチャットボットにしてもRPAにしても、それが役に立っているのであれば非難される必要はないし、特にWatson AssistantについてはAIな要素がちゃんと入っているので、ゾンビAIですらありませんが・・・。

りんなとは違う

ただ、日頃の研修でWatson Assistantの説明をすると、がっかりされることもあります。ルールベースですよね、エキスパートシステムですよね、みたいな。

おそらく、Microsoftのりんなのようなチャットボット(女子高生AI)と混同されているのではないかと思ったりします。りんなは、ただ会話を楽しむためのチャットボットです。Watson Assistantでできるチャットボットは、顧客の問題を解決するためのチャットボットで、会話を長引かせる必要はありません。

もちろん、りんなの技術は素晴らしく、これぞAIという気がします。それだけが必要とされるわけでもありません。

使い続けるほど賢くなるか?

真のAIを用いたシステムは、当初から完成しているゾンビAIと比べると実用段階に持っていくまでに時間がかかります。しかし、真のAIは訓練によって高いパフォーマンスを発揮してくれるため、結果的には長く使用し続けることができるそうです。

取り上げた記事の最後で、このようにまとめられています。これについてはまったく同意で、私がやっているAI研修などは、これが言いたくてやっているというようなところがあります。

ゾンビAIは、使い続けても賢くなりません。プログラムでロジックが組まれているだけなので、いつも同じ動きをずっと繰り返すことはできますが、使い続ければより良い動きになったりすることはありません。

何度も引き合いに出して恐縮ですが、Watson Assistantも使い続ければ賢くなるようにするための材料(機械学習の仕組み)は準備されています。WatsonなどのコグニティブAPIサービスはそれ単体で使うことが基本的にはできず、システムの中に組み込む必要があるので、 そのシステム側でWatsonの機械学習機能を上手く使うように設計されている必要がありますが。

「そのAI、使い続ければ賢くなりますか?」

この質問は、AIといわれている仕組みがゾンビAIでないかを確認するための質問として最適ですし、それに自信を持ってYESと言えるようなシステムを作り、導入したいものです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。