DX(Digital Transformation)について、国の政策を中心に調べたり、考えたりをしているのですが、私も含め多くの人が気になっているのが、何をやればDXと言って良いのか?ということだと思います。
本質的なことを言えば、何がDXか?という議論は不毛だと思います。そのシステムが何であれ、顧客や社会の付加価値向上(コスト削減や売上向上など)につながっていれば良いのですから。
こうした議論は、何がAIか?という議論と同じことで、ディープラーニングじゃない機械学習を使ったシステムをAIシステムと言って良いか?という議論は不毛なわけですよ。目的と手段を取り違えている。ITの世界では起きがちなことだけど。
というか、何がDXか?という話から始めて「そのシステムが何であれ」と言葉を継いだのは間違いかもしれません。DXは個別具体的なITシステムの話じゃなくて、まず社会のあり方とか進歩の方向性の話だし、企業レベルに落とせばそうした社会になるべしという外部環境への変化にどう対応するか?という、経営戦略的な、もっといえばゴーイングコンサーンという企業の前提条件まで遡る話になる。
だから、DXにおいてITシステムというのは必要条件であって、十分条件ではないわけです。経済産業省がDXについて「製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し・・・」と謳っているように、企業のあり方そのものの話で、それだけの覚悟が必要なことなんです。ちょっとITシステム入れたからどうこうというレベルの話ではない。(IPAが紙の資料をデジタル化したらからDXだよね・・・というのは違う!という動画を作っている。)
何が行われていればDXか?
そういう話なので、何をすればDXか?というのは難しいのですが、私なりに考えた結果をエイヤーと言ってしまえば、
- デジタル化
- サービス化
の両方が為されているかではないかと思います。どちらかではダメで、両方が揃う必要があります。
まず、デジタル化はDXがデジタルにトランスフォーメーションするという話だから当然なのですが、もともとデジタルなITサービスのようなビジネス領域はそのままで良いとして、重要なのはリアルで展開されているビジネスをいかにデジタルの土俵に持ってくるかです。
例えば、JapanTaxiはタクシーに乗せてどこかに連れて行くというとてもリアルなビジネスのうち、配車・注文(行き先を告げる)・決済という部分をうまくデジタルの土俵に持ってくることができました。
つまり、リアルの世界が必須となるビジネスであっても、デジタル化できる部分はどこかにある。それをどれだけデジタル化できるかというところが重要になります。
IoTはリアルとデジタルをつなぐ技術なので、DXの主要技術と言えますが、別にスマホやタブレットでも問題ありません。JapanTaxiもスマホとタブレットでしょう。(タクシーの現在位置を捕捉するのは、ずっと昔から行われてきたのではないかと・・・。)
次にサービス化なのですが、まずはリアルで行われているビジネスのできるだけコアな部分を再設計する必要があります。タクシービジネスはもともとサービス業といえますが、DXの古典的事例であるミシュランのTire as a Serviceはタイヤを作って売るというビジネスを、タイヤが提供する便益のサービス化を試みたものでした。
このようなサービス化には、デジタル化が必須になります。ただ、トラックのエンジンとタイヤにセンサーを付けて、稼働状況が可視化されましたね・・・というシステムを作っても、それはデジタル化ができただけであって、サービス化が行われていないのでDXとは言えないということになります。
ITベンダー主導でDXを試みると、どうしてもデジタル化ばかりが先行してしまい肝心なサービス化が実現しないことが容易に想像できます。だから、経済産業省はDX実現シナリオにおいて、IT人材のITベンダーからユーザ企業への移動を期待しているのではないでしょうか。また、ユーザ企業自身にも先ほど述べたように変革の覚悟を求めているわけです。
このように見ていくと、DXこそビジネスと経営の架け橋を担うITコーディネータの出番であるようにも思います。ちょうど、私のITコーディネータ取得時のケース研修で大変お世話になった師匠の記事がありました。
まさに、そうなのであります。