家を買うまで(5)

次は売買契約と住宅ローン特約についてだ。

本筋では、住宅ローンの仮審査をパスして、それから売買契約である。さらに、売買契約と合わせて住宅ローンの本審査を出して、本審査をパスしたら、次は金消(金銭消費貸借契約)、そして融資実行・物件引き渡しとなる。

売買契約の締結時には、手付金が必要だ。一般的には物件価格の1割だから、私の場合は200万円と少しの手付金ということになるのだが、私が購入した地域ではそこまでは要らないらしい。結果、30万円だけだった。たった、それだけ。後にも書くと思うが、頭金が必要と思ってそれなりにお金を貯めたのだが、ほとんど手を付けないままになりそうだ。

で、手付金は買主が売主に支払い、決済時に物件価格から差し引かれるか、満額で決済した後に戻ってくる。買主がキャンセルする場合は手付金は戻ってこない。売主がキャンセルする場合は手付金の倍額を買主に支払う。それが民法上の手付のルール。
ただ、多くの場合、住宅ローン特約を付ける。どこの銀行からも住宅ローンが断られてしまった場合、買主側から物件購入をキャンセルせざるを得ないのだが、その際に住宅ローンに落ちたことが理由ならば売主は手付金をそのまま買主に戻してくれるという特約だ。

その特約を付けているから、仮審査の段階でどこの銀行も落ちてしまったとしても、手付金が戻ってくるだけで終わりとなる。だから、仮審査の結果が出ていない状態で売買契約しても問題ないというわけだ。

結局、売買契約した次の日に最初の銀行から結果が来て、満額可、条件無し、金利も安めな内容だったから、住宅ローン特約の恩恵にあずかることはなくなった。

売買契約はそれなりに時間がかかる。買主側の仲介業者(不動産屋さん)の宅建士が付き添い、売買契約書、重説(重要事項説明書)などの説明がある。細かなことでも気になったら確認すると良い。

購入して引き渡される物件の内容はすべてこの重説の中に書いてあるはずだ。逆に重説に書いていないことは契約の範疇にない。今年の4月に改正された民法において、それまでの瑕疵担保責任は契約不適合責任に代わった。瑕疵担保責任では、物件の「隠れた瑕疵」が発見されたときに買主は売主に対して契約の解除か損害賠償請求ができるというものだ。一方、契約不適合責任は「契約の内容に合致しない場合」に買主は売主に対して、追完、代金減額、契約解除、損害賠償のいずれか(損害賠償については他の方法に加えても可)を請求することができる。

契約不適合責任の方が買主にとっては好条件で、解釈もすっきりしている。あくまで契約した内容と対象物(引き渡された物件)の不適合があるか否かである。だから、この売買契約とその際に説明される重説の内容が重要なのだ。と、ここまで力説するのは、後でちょっと問題が生じたからなのだが。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。