事業とITは不可分になっていく

「デジタル社会の戦略的経営管理入門」という本を読みました。日科技連出版社というなかなか渋いところから出ている本ですが、データサイエンスを経営や仕事の現場にどう活用するかが説明されています。

本旨とはちょっと違うのですが(本旨についても別記事にしたいと思います)、ITシステムへの価値観について時代の変遷があるという話が出ていて(別の論文か書籍からの引用だったと思うのですが、いま出張中で原本がないので、帰ったら調べて追記します)、凄く納得感がありました。

(追記)上記のITシステムへの価値観は、大阪市立大学商学部編「ビジネスエッセンシャルズ(2) 経営情報」所収、高橋敏郎「経営と情報」をもとに著者が一部追加、変更したもの。

以下にご紹介します。

ITシステムへの価値観

  • 必要悪
    • 仕方なく利用する
    • ITシステムは経営の主活動を行う上でやむを得ず必要になるもの
  • 道具
    • 便利だから利用する
    • ITシステムに求められるのは瞬間的な費用対効果(求められる効果が短期間で発揮できるか)
  • 資源
    • 蓄積が必要な資源である
    • 人・物・金と並ぶ「情報」という資源
    • ITシステムを継続的に活用することで、ITシステムを活用するための知識やノウハウを蓄積することが重要
  • 戦略資源
    • 戦略的に位置づけられた蓄積される資源である
    • ITシステムは企業に競争優位をもたらすものであり、状況によっては人・物・金への投資を差し置いてでも積極的に投資するべきもの
  • 無意識
    • ビジネスと不可分だから特別扱いは不要である
    • 事業システム=ITシステムであり、事業への投資の中にITシステムへの投資はほぼ必然的に含まれている

いま自社のITはどの価値観に位置づけられるか?

デジタイゼーション→デジタライゼーション→DXというDXのフレームワークがありますが、デジタイゼーションは道具〜資源、デジタライゼーションは資源〜戦略資源、DXは無意識くらいに位置づけられるのではないかと思います。

私がお話を伺う中小企業の多くは、さすがにITを必要悪とまでは考えていないと思いますが、現状としては道具かその一歩手前くらいに留まっているところが多いような印象があります。そんな中で無理矢理ITが入ると、必要悪と感じてしまう・・・ということはあるかもしれませんが。
そうした状態から動き出して、道具〜資源くらいまでは進みたいという中でご相談があるといった感じでしょうか。

もちろん、企業によっては資源〜戦略資源くらいで考えているところもあります。某大手企業のデータ戦略について少し伺ったことがあるのですが、データを少なくとも資源として管理しようという気概を感じました。あとはそのデータをしっかり活用していければ戦略資源にまで進めると思います。

無意識の状態まで進んでいる企業は、いまのところITサービスを展開しているスタートアップくらいしか知りません(AmazonとかUberとかの名だたる企業は別として。身近なところでは・・・)。
ITスタートアップは当然にビジネスとITは不可分だし、事業システム=ITシステムで、ITシステムを開発して顧客数を拡大していくことで投資を引き出そうとしています。

非IT企業が目指すべきはどこまでか?

DXが叫ばれているのだから、全企業が無意識まで行くべきでしょう。

というのは、果たして真か?

少なくとも複数の事業を抱えている企業であれば、事業の単位で考えるべきことかもしれません。経理システムとか人事システムといったバックオフィス系は企業の単位で良いでしょうが、お金を稼いでくるところ(事業)はケースバイケースかもしれない。

それでも、今後のビジネスでITが一切絡まないというものがどの程度あるのか。
製品やサービスで提供される便益のすべてがITによって行われるということはあり得ないけれども、どこかでITが絡むというのが自然な姿のような気がします。
製品(モノ)であればどこかにマイコンなどのコンピュータが入っていることが多いのですが、それがインターネットにつながってIoT化していくのは必然でしょうし、サービスは顧客とのタッチポイントのどこかがIT化されるのは当たり前になってきました。

そう考えると「不可分」、「事業投資の中にIT投資が必然的に含まれる」というのが普通(になってくる)なのかもしれません。

ITも事業を考えないといけない

逆にいうと、これまでITのことばかりやってきた人たちも事業のことを考えないといけないのでしょう。事業とITが不可分ということは、ITの方から考えても事業は不可分です。

いままでもITがどのような便益を提供できるのかについては考えてきたと思いますが、ITが直接的に与える便益を超えて、そもそもどのような事業なのか、その事業の中でITはどのように出てくるのか、ITのコストを当該事業の利益から捻出できるのか・・・など、事業の意識をしっかり持ってITに取り組んでいかないといけないのだと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。