桂吉弥独演会を博多座で観る

8月3日に博多座で開催された、噺家生活三十周年「桂吉弥独演会」を観てきました。

吉弥さんは、人間国宝・桂米朝さんの孫弟子にあたる人で、テレビでもお馴染み(特に関西では)の方と思いますが、なんといってもNHKの朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」で知ったという方が多いのではないでしょうか。

私もそうなんですけどね。しかも、リアルタイムじゃなくてNHKオンデマンドで観たクチなので、にわかな感じではありますが。ただ、ちゃんと最初から最後まで観ているので、それで許していただくとして・・・。

その吉弥さんが、博多座で、「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」をやるというので、これは是非、観ないといけないと思ったわけです。後で振り返ると、この8月3日という日は、北九州ではわっしょい百万夏まつりの「夏まつり大集合」が行われている日であり、中川家の特大寄席(プラチナチケット!)のライブビューイングが映画館で行われる(これならチケット取れるはず!)日とのことで、いろいろ詰まった日であったのですが、最初に開催を知ったのが、この吉弥さんの地獄八景なのでありまして、いろいろ観たいものをかなぐり捨てて、吉弥さんを取ったというのが、この2024年の8月3日なのでありました。

吉弥さんは口上も含めて3度登場しますし、ゲストも豪華でありまして、こちらもテレビでお馴染みの桂南光さんです。あと、桂そうばさんは福岡市早良区室見が地元とのこと。色物の矢野・兵動は、よしもとの福岡の劇場にゲストで来た時は大トリを取る人たちです。

お目当ての地獄八景はもちろん、もう一席の「七段目」は芝居噺でありまして、普段は歌舞伎公演も行われている博多座ならではの選択ということでした。音響も素晴らしく、噺の中に組み込まれた鳴り物である「ハメモノ」が多い上方落語にとって、博多座は最高の舞台かもしれませんね。

そして、地獄八景。なにしろ1時間超のネタですが、吉弥さんによれば大ネタではないとのこと。たしかに、最初に登場する鯖にあたった男や、その男が葬式を手伝ったご隠居さんは、ふぐにあたった一団が登場した後は出てこない。伏線として後で回収されることもない。そのふぐにあたった一団も閻魔大王が登場した後は、出てこない(きっと十把一絡げに極楽に行ったのでしょう)。

大掛かりなストーリーがあるとか、泣かせのシーンがあるとか、そういうことはなくて、ただただ長い噺。それが地獄八景だということなのでしょう。必ず時事ネタも入れないといけないし、大変な噺だとは思うのですが。途中で谷村新司の昴を熱唱するシーンもあったりして、サービス満点の噺でありました。大満足。

ところで、パンフレットと思わせるくらいの豪華なプログラムが配布されたのですが、最初に登場していたのは貫地谷しほりさんでした!そう、「ちりとてちん」のヒロインです。2007年に放送されたドラマですが、いまもこういう縁が続いているのですね。しかも、この独演会ツアーの別会場には、狂言の茂山宗彦さんも登場するようです。やはり「ちりとてちん」つながりですね。

と、いうことで、初めて博多座の中に入ったのですが、素晴らしい会場で、素晴らしい噺を観ることができました。良かった、良かった。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。