北九州市民寄席「桂米團治独演会」を見る

今年、何度か訪れた北九州市民寄席。もともと落語好きですが東京にいる時は、いつでも行けると滅多に行かなかった寄席に、北九州ではこのタイミングを逃すと、と思うが故に、むしろ生で落語を見る回数が増えました。

今回は、桂米團治さん。言わずと知れた人間国宝、桂米朝さんの息子さんですね。昔、TBSの落語研究会で米團治さんの華やかな噺を聞き、一度は生で見たいと思っていた中の一人でした。(結局、米朝さんを生で見るチャンスはなく。横浜で小三治さんを見ることが出来たのは貴重でした。)

開口一番は4番弟子の桂米舞さん。出囃子は「石段」。上方の開口一番の出囃子は必ず石段ですから、ならではですね。小倉で石段が聞けるとは!華やかなピンクの振り袖の出で立ちで、会場のおばさま方からは「可愛らしいねぇ」という感想があちこちから聞こえました。演目は「動物園」。まだまだ、覚えた台詞を言っているだけという感じでしたが、しっかり笑いは取っていましたし、これからに期待です。

次に登場した桂米輝さんは、若さもあってパワフルの一言。演目は「つる」。枕に桂吉弥さんとのエピソードを交えながら、しっかり爆笑を取っていました。

そして、いよいよ米團治さんの登場。まずは季節の風物詩「掛け取り」、そして中入り後は「子は鎹」の2席。どちらの噺でも枕に父・米朝さんのエピソードを入れつつ、ざこばさんや南光さんといった上方の人気者との話も登場。顔をしかめながら右手を後ろにやる、いつもの米朝さんの物まねが見られたのも良かった。

圧巻だったのは「掛け取り」でしょう。米團治さんお得意のオペラのネタが出るだけでなく、芝居好きの醤油屋を追い返すシーンでは歌舞伎の台詞に北九州の地名や会社名などを織り交ぜ、会場からは拍手喝采。覚えているだけでも、小倉駅、京町、魚町、旦過市場、北方、企救丘、折尾、足立山、皿倉山、城山公園、紫川、TOTOに安川電機、ひびしん(福岡ひびき信用金庫)に、資さんうどん。そして今日の会場パステルホール。たぶんまだまだ入っていたはず。これだけ作り込むのはかなり大変だったはずで、それだけ北九州の人に喜んでもらおうという気概が感じられて、感動しました。

さらに、この市民寄席、お囃子も生だったんですね。。米輝さんが福岡のお囃子さんに来てもらっているという話をしていました。この「掛け取り」には噺とお囃子を合わせるハメモノといわれるシーンがありますが、その息もピッタリでした。

最後の「子は鎹」は、母のおはなが子どもの虎ちゃんを怒るシーンで会場から「ヒヤッ」と声が上がったのは鬼気迫る演技ゆえと思いますが、全体的には感動ものというより笑いがふんだんに入ったものだったと思います。掛け取りと違ってしっかりストーリーで聞かせる噺だと思いますが、聞き応えは充分でした。

会場のパステルホールがある小倉井筒屋新館から本館への渡り廊下から見る紫川と小倉城

ということで、今年の落語納めですかね(生では)。来年は、米朝生誕100年とのこと。九州でも何かあるのか、楽しみなところです。北九州市民寄席では、来年の笑い始めは春風亭昇太さんとのことです。

黒崎ひびしんホールの方ではどうですかね?今年は、先日の蝶花楼桃花さんと桂宮治さんの二人会がありましたが、さて?

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。