新年のごあいさつと「融合と成果」について

あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

2025年がスタートし、今日から本格的に仕事を始めています。「本格的に」と書いたのは、実は1月3日からすでに少しずつ作業を進めていたからです。1月中旬から2月第1週にかけて、登壇の予定が目白押し。特に1月最終週以降は、まるで「登壇ツアー」の様相を呈しています。その多くが新規の内容であるため、年末年始はひたすら資料作りに追われる日々でした。

そんな中、大晦日に「2024年の振り返り」と題した記事をアップし、その中で2024年を「融合と成果の年」と位置付けました。

本記事では、その言葉に込めた思いや、新年の活動計画について深掘りしていきたいと思います。

「融合と成果」の背景

まず、「融合」とは何を指すのか。それは、以下の3つの要素を統合する取り組みです。

  • 2024年3月にリリースされた「ITコーディネータ・プロセスガイドライン(PGL)Ver.4.0」(以下、PGL4.0)
    • 私も執筆に参加した、価値の創出と提供のプロセスに焦点を当てた新しいプロセスガイドライン
  • 弊社の生成AIを活用した取り組み
    • 特に弊社の生成AI利活用クラウドサービス「Gen2Go」など、ここ2年間で進めてきた生成AIへの取り組み実績
  • 中小企業支援の現場経験
    • DX推進や業務効率化を目指した具体的な支援活動

これらを融合することで、生成AIを単なるツールとしてではなく、価値創出のための「仕組み」に昇華させたいと考えています。

生成AIがもたらす可能性

生成AIは、プロンプトベースの使い方だけでも目を見張る成果を生み出します。例えば、プレゼン資料作成サービス「Gamma」や、コード生成を支援する「GitHub Copilot」は、その実用性を証明しています。

また、今後はAIエージェントとしての活用が注目されています。弊社の「Gen2Go」でも初歩的なAIエージェントの実装を行い、実際のプロジェクトでも効果を実感しています。生成AIが単に予測や認識を行うだけでなく、成果物そのものを生み出す能力を持つことは、極めて重要です。これにより、人間の仕事の一部を代替できる可能性が飛躍的に高まっています。

AIと人間の共創:HITLとEITL

一方で、生成AIが進化しても、人間の役割が完全になくなるわけではありません。AIが生み出した成果物を評価し、最終的な意図を付与するのは、やはり人間の役割です。この考え方を支えるのが、以下のフレームワークです。

  • Human In The Loop(HITL): AIのプロセスに人間が関与し、調整や判断を行う。
  • Expert In The Loop(EITL): 専門家がAIの限界を補完し、専門的な価値を提供する。

HITLやEITLを意識した業務設計やシステム設計が、生成AI活用の鍵を握ります。
PGL4.0においては、デジタル経営実現サイクルの中(特にデジタル経営実行計画プロセス)で検討することになるでしょう。

「意図」を生み出すのは人間だけ

生成AIは膨大な知識や能力を持っていますが、その技術を使って「何を実現したいのか」という意図を作るのは人間にしかできません。プレゼン資料をAIで簡単に作れるとしても、その資料で何を伝えたいのか、どう説得するのかは人間が決める必要があります。

つまり、技術を使うための「テクニック」ではなく、その技術をどう活用するかという「意図」が求められるのです。
PGL4.0においては、デジタル経営戦略プロセスで検討する事柄といえます。

デジタル経営成長サイクル全体としては、組織の成長によってケイパビリティを向上させる観点が入っています。
そのため、単に「意図(=戦略)」を生み出すといえば、まずは戦略検討のところが該当します。
ただ、AI活用に伴うさらなるデータ蓄積をベースに、ハーベストループを描くところまで含めれば、デジタル経営成長サイクル全体が該当すると言っても良いかもしれません。

AIで価値を創出する and 価値の創出をAIで考える

ここで述べているのは、基本的にはAIで価値を創出する方法についてです。HITLやEITLを検討するのは、定義した価値を実現するための手段を考える中でのことですし、意図を生み出すのは、提供するべき価値を構想するためです。

ただ、そうした手段の検討や、価値の構想を行う作業そのものでAIを活用することも考えられます。生成AIはアイディア出しや、壁打ち相手のツールとして最適だからです。

つまり、PGL4.0の実践の中でAIを活用するということは、経営の中でのAI活用をPGL4.0によって実現するということであり、かつ、PGL4.0のプロセス自体にAIを組み込むということの両方を指します。

中小企業支援におけるAI活用の可能性

中小企業のIT化は多くの場合、まだ道半ばです。IT投資の不足、属人化した業務フロー、ITスキル不足など、課題は多岐にわたります。しかし、これらを理由にAI活用を諦めるのではなく、むしろAIを活用することでIT化を加速させるアプローチが必要だと考えています。

例えば、従来のITシステムでは対応が難しかった属人化した業務でも、生成AIの柔軟性を活用すれば解決できる可能性があります。魔法の杖や銀の弾丸はありません。しかし、一つ一つの課題に向き合い、「AIを活用するからこそIT化が進む」という視点を取り入れることが、新たな未来を切り拓くことにつながるはずです。

融合と成果の実現へ

「融合と成果」というテーマのもと、生成AI及びAIエージェントの情報収集と活用、PGL4.0を踏まえた生成AI活用の研究と実践、そして中小企業支援に取り組むことでこそ、新たな価値を創出できると感じています。今年はこれらの取り組みを通じて、具体的な成果を示し、持続可能な成長への道筋を描きたいと思います。

成果を出す場としては、昨年末から、いくつか具体的に動き始めている話があります。
そうした場での活動を通じて、生成AIを中小企業の現場でどのように役立てられるかを具体的に探り、成果を上げていきたいと考えています。
2025年、この挑戦を皆さんと共有していきたいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。