こないだ掲載した社内論文に関して、社内報に載せる記事を頼まれました。受賞コメントというやつです。
これも、載せてしまおうと思います。
まずは、この度、私の書いた論文が入選という評価を戴いたことに、感謝申し上げます。論文らしからぬ文章であったと思いますし、結論に至っては、それが得られたかどうかすら疑問でしたから、入選の報を戴いた時には、率直に驚きを持って受け止めました。これは正直なところです。
ところで、今年の1月に、梅田望夫氏の「ウェブ進化論」が出ました。私にとっては、意外なほどベストセラーとなりました。このような本でも、売れる時代なんだなという思いです。皆さんの中にも、読まれた方が少なくないのではないでしょうか。見事に論点整理されたこの本が、もっと早く出ていたなら、私の論文も、もう少し良いものになったのではないかと、悔しい思いをしています。
梅田氏によると、Web 2.0は、チープ革命、インターネット、オープンソースだ、とのことです。
チープ革命は、最近出来た言葉だと思いますが、歴史を振り返ると、これまでにもチープ革命は存在していたのです。
私が生まれる少し前に登場したパソコン(当時はマイコンかもしれません)は、個人が「こちら側」で、コンピュータに触れることが出来るようになった出来事でした。これは、コンピュータが個人でも買える値段になったということであり、正にチープ革命です。
次に、今から10年ほど前に訪れたインターネットです。プロバイダ料金が、個人が契約出来るほどの値段になったのです。個人が「あちら側」を、客体として経験出来るようになった契機だったと思います。
そして、今です。インターネットはブロードバンド化し、高速かつ常時の接続が可能になりました。月に数百円のレンタルサーバや、無料ですら持てるブログも出来ました。これは、個人が「あちら側」でのコンピューティングを、主体として経験出来るようになった革命です。
つまり、私たちは「こちら側」から「あちら側」に進み行く、3回のチープ革命を経験しているのです。(3回目は、正に今、起きていることです。)
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私たちの専門分野に目を移します。
1度目の革命で、企業情報システムはオープン化のスタートを切りました。
2度目の革命で、Webシステム化が進みました。
3度目の革命で、何が起こるのでしょうか。
それは、私たちが考えなければなりません。運良く(運悪く?)、私たちは、そういう時代を、ITを飯の種として生きているのだと思うのです。
残念ながら、Web 2.0は、企業情報システムでは、ゆっくりとしか進展しないと言われています。梅田氏によると、開放性とトレードオフが必要とのことです。開放性とは企業が自社の持つ情報をオープンにするということです。トレードオフは、ミッション・クリティカルをあきらめるということです。どちらも、企業情報システムには難しいことでしょう。
しかし、だからといって、それが無理なこととは思いません。開放性とトレードオフを容認出来る領域のシステムは、企業内にも存在するでしょう(梅田氏も言うように、例えば情報系です)。そして、もう1つ、経済活動が行われる比率が、「こちら側」と「あちら側」で拮抗したり、さらには「あちら側」が大きくなった場合は、どうでしょうか。
私は、1度目、2度目の革命の際は、この仕事をしていません。(生まれていなかったり、学生だったりしました。)
その頃、何が語られ、どういう風に思われていたのでしょうか。出来れば、当時を経験された方々と議論をさせて戴きたいとも思っています。
思わず、長くなってしまいました。それでは、これで失礼します。
この度は、誠にありがとうございました。