10分散髪のマーケティング

私も時折お世話になる10分散髪ですが、最近どんどん店舗が増えています。

注目したのは、最大手のQBハウスでは理容店が4割で残りは美容室だということ。QBハウスをはじめとする10分散髪は、すべて理容店だろうと思っていたのですが、そうではなかったのですね。

その理由は、理容師法と美容師法が分かれていること。理容師と美容師は同じ店舗で働くことが出来ず、保健所に届け出るときに状況に応じて使い分けているとのこと。

そもそも、QBハウスの従業員の半分以上が美容師だったということになるのですが、どうやら美容師の資格を取っても、一般の美容室に入ると上下関係の厳しさや指名競争から、なかなかカットさせてもらえないことが多く、すぐにカットさせてもらえる10分散髪は就職口として魅力的なようです。

10分散髪のマーケティング的ポイントは、新しい市場セグメントの発見です。「フルサービスはいらないから、速く、安く」という市場セグメントは、考えてみればあって当たり前ですが、10分散髪が出来るまでは、そのような市場セグメントは存在しなかったのです。

QBハウスの場合、値段は1,000円です。フルサービスの理容室は2,000~3,000円台であることを考えると圧倒的に安く、それでいて普通に散髪してくれるので、顧客満足度は高いといえます。消費者は「安いのに、これだけのクオリティがある」というサービスには弱いものです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。