顧客価値と事業価値

企業における「価値」について考えていて、いくつかの書籍を読みました。価値という言葉はいろいろと使われていて、顧客価値、事業価値、企業価値、価値観・・・などあるわけですが、まずは顧客価値と事業価値について私の理解を整理しておきたいと思います。

顧客価値

その名のとおり顧客にとっての価値なのですが、何を顧客にとっての価値とするかはいくつかの切り口があります。

バリュープロポジションキャンバス

まずはバリュープロポジションキャンバスがあります。

バリュープロポジションキャンバスは、2つの主要な部分で構成されています。

顧客セグメント (Customer Segment):顧客のニーズや課題を理解するための部分

ジョブ(Jobs):顧客が日々の生活や仕事で達成しようとしている主要な目標
ペイン(Pains):ジョブを達成する際に遭遇する障害や問題
ゲイン(Gains):ジョブの達成に対して期待する利益や成果

バリュープロポジション (Value Proposition):顧客のニーズに対して企業がどう応えるか

製品・サービス(Products & Services):提供する製品やサービス
ペインリリーバー(Pain Relievers):顧客のペインをどう解消するか
ゲインクリエイター(Gain Creators):顧客のゲインをどう実現するか

ここで顧客セグメントのニーズに対して企業が提供した、バリュープロポジションの製品・サービスに、セグメント内の顧客は価値(顧客価値)を感じます。

PSfit

Problem Solution Fit(PSfit)は解決すべき課題の仮説に対して、ソリューションの仮説が適合している状態のことです。

顧客のペインを課題として、顧客のゲインを実現するようなソリューション(製品・サービス)が提供できるかどうかを仮説検証で評価し、適合している状態(PSfit)になれば顧客価値を実現できているといえます。

WTP

「価値」こそすべてという書籍では、バリュースティックについて説明されています。

バリュースティックにおいてWTPは支払意思額のことであり、顧客が製品やサービスに対して支払うであろう上限額です。
つまり、顧客は自分にとって価値があると思う製品・サービスについて対価を支払うので、その上限額であるWTPは顧客価値を数値化したものといえます。

事業価値

企業にって顧客価値を実現できても、それがイコール事業価値にはなりません。事業価値は端的には収益性で示され、企業が顧客価値を実現できたとしても赤字であれば、事業価値はマイナスになりますし、顧客価値を持続的に提供することもできません。

WTS

バリュースティックにおいてWTSは売却意思額であり、従業員とサプライヤーの視点です。従業員がジョブオファーを受け入れるために必要な最低限の報酬であり、サプライヤーにって製品やサービスを供給することのできる最低限の価格です。

WTPとWTSの差であるバリュースティックの長さが企業がその事業で生み出す価値であり、ここでは事業価値となります。(企業価値は詳述しませんが、事業ポートフォリオや財務の視点を考慮する必要があります。)

PMfit

PSfitに対してPMfit(Product Market fit)があります。PSfitを検証できた製品・サービス(Product)が市場(Market)に適合しているかを示します。PSfitは少人数の顧客での仮説検証になってしまうので、それが市場に広く受け入れられるかは別の話です。また、PMfitでは企業が期待するビジネスになるか(収益性を確保できるか、継続的な事業として展開できるか、スケールできるか等)の検証も合わせて行います。

収益性については、上記のバリュースティックで示すことができます。

ビジネスモデルキャンバス

WTSには顧客とサプライヤーの視点が入っていますが、PMfitを実現するには他の視点もあります。

  • 顧客セグメント (Customer Segments)
  • 価値提案 (Value Propositions)
  • チャネル (Channels)
  • 顧客関係 (Customer Relationships)
  • 収益の流れ (Revenue Streams)
  • 主要リソース (Key Resources)
  • 主要活動 (Key Activities)
  • 主要パートナーシップ (Key Partnerships)
  • コスト構造 (Cost Structure)

これはビジネスモデルキャンバスの構成要素ですが、PSfitは顧客セグメントと価値提案についての適合性を示しており、PMfitでは全体的な適合性が求められます。

WTSで考察できるのは収益の流れと、主要リソースや主要パートナーシップ、コスト構造についてであり、顧客セグメントへのアクセスはチャネルや顧客関係で、提供する価値を実現するための業務は主要活動を考察する必要があります。

まとめ

企業は新たなビジネスを始める場合でも、既存のビジネスの改革・改善を行う場合でも、まずは顧客価値を確認、定義する必要があります。顧客価値が提供できないということは顧客が存在しないということであり、企業を存続することができません。
顧客価値を実現した上で、事業価値を生み出す必要があります。事業価値があるということはビジネスとして成り立っているということであり、収益を確保して企業を存続するための条件を成立させるからです。企業の存続は顧客価値を継続的に提供するための前提でもあります。

今後は、顧客価値と事業価値の深掘りや、企業価値についても書いていこうと思います。

参考にした書籍は下記のとおりです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。