まちづくり3法の改正→シネコンの伸びが鈍化

久しぶりに日経新聞を読み始めたのですが、今日気になったのはこの記事。

18年ぶりに国内映画館のスクリーン数が減ることが確実になったそうです。この10年ほどは一般映画館が減少しても、シネコンが増えることで全体のスクリーン数が増え続けてきたのですが、ここ2~3年はシネコンの伸びが鈍化。今年はついに全体スクリーン数減となるまでに至ったというわけです。

109 Cinemas Grandberry Mall
109 Cinemas Grandberry Mall / Dick Thomas Johnson

シネコンの伸びが鈍化した理由として、飽和状態に近づきつつあるというのもあるでしょうが、最大の理由はまちづくり3法の改正があります。まちづくり3法というのは大規模小売店舗立地法(大店立地法)、中心市街地活性化法、都市計画法の改正によるゾーニングを指しますが、これらは平成10年~12年頃に施行され、平成18年に効き目を強くする方向に改正されました。

なぜ、まちづくり3法がシネコンの伸びの鈍化につながるのかというと、シネコンの大半が郊外の大型ショッピングセンター(パワーセンターと呼ばれる業態)に入居しているからです。

・・・。まだ、何のことだか話がつながりませんね。それでは、ちゃんと説明します。

話は昭和49年に施行された大規模小売店舗法(大店法)まで遡ります。昭和49年頃というとダイエーやイトーヨーカドーといったスーパーが大型店を中心市街地にどんどん作っていた時期で、それまであった商店街がこてんぱんにされていました。そこで出来たのが大店法。これは元からある商店街を保護するために市街地に大型店を作るな!という法律なんですね。ざっくり言うと。

だから、大型店は商店街のある中心市街地を離れて、郊外に出来ていきます。規模もどんどん大きくなります。ちょうどモータリゼーションが進んでいたのも功を奏したのでしょう。特に地方では国道沿いの大型ショッピングセンターが圧倒的な集客を見せ始め、土地も広いことから多くのスクリーンをもったシネコンが入居するようになります。この流れでシネコンがどんどん増えていったわけです。地方といえばジャスコ(イオン)、買い物はジャスコ、外食もジャスコ、映画を観るのもジャスコというわけです。

しかし、大店法で保護されて元気になると思っていた、昔ながらの商店街の落ち込みが止まらない。で、やっぱり大型店が近くにないと集客がないからダメだという話になって、平成12年に大店法が廃止となり、大型店の規制から商店街との共生に舵を切った大店立地法が出来ます。

高齢化社会を迎えた今、車がないと日常の買い物すら出来ないという社会は敬遠されるようになり、徒歩圏内で生活が成り立つコンパクトシティーという概念が脚光を浴びています。そもそも国の財政は逼迫しているので、コンパクトシティーの方が国の負担が少なくて良いのですね。その辺だけこじんまりと整備すれば良いのだから。

そして、決めうちとなったのが平成18年の改正で、今後の街づくりはコンパクトシティーが基本であって、郊外に大型ショッピングセンターを作るのは立地制限の強化などにより基本的にはNGということになったのです。

ということで、今までシネコンが入居していたような郊外の大型ショッピングセンターが増えないことになり、よって今までどおりの形態でのシネコンも増えないということになったわけです。

逆に、新宿のど真ん中(からは少し外れますが)にバルト9というシネコンが出来たり、新宿コマ劇場の跡地にもシネコンが出来るという話です。こうした動きは、郊外に出店出来なくなったシネコンの都心回帰ですね。

同じような大型店の都心回帰としては、ヤマダ電機の都心への出店が加速していることも挙げられます。

ということで、今日はシネコンを切り口として、まちづくり3法について、書いてみました。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。