ドコモの新しい企業ビジョンに「Relate」が入っているのは評価されるべき

今日(7月29日)NTTドコモの四半期決算の発表会がありました。純増数やパケットARPUの増加は順調ながら純利益は3.5%減とのこと。

それはさておき、ドコモの新しい企業ビジョン(2020年ビジョン)が発表されたのですが、その中に「Relate」が入っていることに私は注目しました。(このブログのタイトルはRelatusですから!)

ドコモの新しい企業ビジョンはHEART。Harmonize、Evolve、Advance、Relate、Trustの頭文字を取ったものです。Relateには下記のような意味が込められているのだそうです。

つながりによる喜びの創出「Relate」
ドコモは、人・モノ・様々な情報が時間や空間を超えて自由かつフレキシブルにつながる世界を通じて、誰もが、自分のスタイルに合った知識・楽しみを、いつでも、どこでも、表現・享受・創造できる毎日を演出していきます。
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2010/07/29_00.html?ref=nr_index

ネットが一般化した世界は、つながることの価値が増大する世界であると考えます。人間はソーシャルアニマルといわれるほど、社会とそこで生まれるつながりを追い求めてきました。そのつながりが生じる速さと数を圧倒的にするのがネットの威力です。人間は今までとは比べものにならない大きなつながりの中で生きるようになります。物事の価値はつながりの中で生まれ、つながりによって評価されるのです。
そうしたネット世界の土台を築いている企業のひとつがドコモです。そうした企業がRelateの価値を認め、企業ビジョンに据えたことは重要なことです。

ちなみに前の企業ビジョン(2010年ビジョン)はMAGICで、Mobile Multimedia、Anytime Anywhere Anyone、Global Mobility Support、Integrated Wireless Solution、Customized Personal Serviceでした。機能を示す言葉ばかりで、Relateに相当する社会のあり方を示すような言葉は入っていません。

この10年の間にネットの立ち位置が変わったのだと思います。「こんなことが出来るよ凄いね」という単なる驚きを生み出す何かから「これから社会の何が変わるかな」と本当に時代を変えていく何かになったのです。だから、ドコモとしても機能を並べ立てるようなビジョンをやめたのでしょう。
新しいビジョンのRelateの項目をさらに読んでみると「表現・享受・創造」という言葉が入っています。私なりの理解では、ある人が自分の知識や楽しみを「表現」する。それを「享受」する別の人がいる。ここに関係(つながり)が生まれます。その関係が次の知識や楽しみを「創造」する。そういうことではないでしょうか。

ネットの世界とは、そういうものだと思います。表現する人と享受する人がいる。これだけでは一方通行の世界です。それならネットでなくても良い。でも、そこで生まれた表現者と享受者の関係が次の創造をするなら、それがネットの真価です。
ドコモが考えていることと、私が考えている上記のようなことが一致しているのかは分かりません。でも、ひとりひとりが考えているネットの真価、つながりの力について、どんどん声を上げるべきでしょう。それが次の創造につながるのですから。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。