25分ルールを総括する(2)

(このエントリーは、1997年12月22日に書いた文章を、2016年7月に復刻したものです。)
(このエントリーは、1997年12月22日に書いた文章を、2016年7月に復刻したものです。)

25分ルールが日本で初めて適用されたときの記事を参照してみよう。

FIVBが提案している25分併用ルールが、30日の日米対抗で初めて適用された。しかし評判は「接戦の醍醐味を失う」、「こりゃダメだ」など散々なものだ。
今回、大会でのテストを指名された日本協会の豊田専務理事は、FIVBに対して「デメリットが大きい」と否定的な報告をすることを明らかにした。
また、11月のグラチャンでもテストが予定されているが、場合によっては共催のテレビ局が、テストの中止を求める可能性もあるという。
(第46週・97年7月)

なぜ評判が悪かったのだろう。一番の理由は記事にあるとおり「接戦の醍醐味を失う」ことだ。例えば13−9でラリーポイント制に入った場合、負けているチームはまず逆転できない。今までのルールであれば逆転の可能性はあるわけで、この辺のドラマが失われるということだ。
理由はもう一つある。最初の理由にも関係があるが、勝っているチームが時間稼ぎをして、なんとかラリーポイント制に持ち込もうとする。勝負である以上、理解の出来る考え方だが、この時間稼ぎが潔くない。フェアプレー精神に反すると言われてしまう。

ところで、先の記事の最後に「共催のテレビ局が、テストの中止を求める可能性も」とある。実際、日本テレビがテストの中止を求めることはなかったが、元はテレビ局のためであったはずなのに、皮肉なことになってしまった。
FIVBはグラチャンを前にルールを一部、修正した。放送を見た方なら、解説でしつこく言っていたのでご存知だろうが「20分経過後からはタイムや選手交代のときに時計を止める」というものだ。時間稼ぎの対策である。
この時間稼ぎ対策が功を奏したのか、フェアプレー云々の嫌悪感はそれなりになくなったのではないだろうか。とはいえ、最大の理由である「接戦の醍醐味を失う」ことは解決されていない。

筆者は、グラチャンを見ていて「時間も24分だし、あと1点とれば勝てるぞ」と思っていた。読者の皆さんもそうではないだろうか。接戦の醍醐味はない代わりに、時間との勝負というか、計算を観戦者もするようになった。ドラマとしての感動はないとしても、そういう面白さを認めることは出来ないだろうか。
25分ルールはテレビ放送の回数を増やすことを目的にしている。もちろん放送するかを決めるのはテレビ局だが、時間に関してはこのルールで明らかに短くなるし、CMを入れる回数にしても、各セットの間でもテクニカルタイムアウトで2回と、試合時間が25分以上ならばスペシャルインターバルで1回の、合計3回も取れるようになった。
放送回数の増加の決め手は、結局、バレーボールの人気次第だ。ここが解決されない以上、何も期待は出来ない。ルールの改正は条件整備に過ぎない。

メディアの論調は、違和感・複雑・面白くないといったところ。違和感は新ルールである以上は仕方ないとしても、ルールは複雑になってしまう。
ファンの問題意識も高まっている。このページもその一つだと思うが、特記すべきは恒陽社のアンケート(http://www.lifeserver.co.jp/volley/index.html)だろう。

問題山積の25分ルールだが、JVAの豊田専務理事は「どちらにしても採用されるのは違いない」と言い、提案側のFIVBのアコスタ会長は「心配していない」と一蹴している。この新ルールは来年の総会にも提案され、2000年の総会で正式採用になる方向だ。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。