開放性とトレードオフ

ITProに、梅田望夫氏に、Web2.0が企業情報システムに使えるか?という、質問を投げかけている記事が掲載された。
これぞ、まさに求めている質問内容。さすがに、ITProだと感心した。

その回答は、開放性とトレードオフを受け入れられる企業では、Web2.0が有効というもの。
さすがに、シンプルかつ含蓄のある回答だと、膝を打った次第。

本当に、そのとおりだと思う。
2005年末から、2006年の年明けにかけて、Web2.0の調査に没頭していたが、それが、自分の今の仕事である企業情報システム(の開発)に使えるか?というと、なかなか厳しいなと思ったのだ。
その理由を、梅田氏ほど的確に表現出来なかったし、言い切る自身が自分になかったのだが、「開放性とトレードオフ」という言葉を与えられると、実に頭がスッキリしたようになる。

だから、企業での活用は、情報系が率先するし、そもそも活用されるまでにかなりの時間がかかるという。
「ウェブ進化論」にあったが、誰かが率先して成功事例を見せてあげる必要があるのだろう。

ITProの記事では、梅田氏はセキュリティやコンプライアンスの意識の高まりが、一方で開放性に逆行し、生産性を落としているのではないかという危惧を示している。
この危惧は、まさにそのとおり!としか、言いようがない。

私は、セキュリティやコンプライアンスが不要という気は、さらさらない。
しかし、あまりに過剰な反応は効果的でないとも思う。

Web2.0が進んでも、一部の領域では、開放性とトレードオフを許容出来ない情報システムは存在する。それは、批判されることではなく、当然のことだ。
誰だって、銀行の基幹システムには、機密性と堅牢性を期待するに違いない。特に、日本ではその傾向が強いのではないだろうか。

1人の技術者としては、そういう側と、そうでない側のどちらの仕事に与するかでしかないだろう。

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この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。