“人間の状況は着実に複雑になりつつある。しかも加速度的に。複雑さが加わるにつれて重大な問題の緊急性も増す。仮に、複雑さと緊急性を測る尺度というものがあれば、複雑さに緊急性を掛け合わせた結果はその問題が人間に課す困難の度合いを示す指標になるだろう。
(中略)
コンソールの前の人々がみな同じコンピュータ複合体につながっていて、同時に協力して作業できたら、既存のいかなる方法よりはるかに密接に協力できて効果的ではないかとも考えた。”
「ワークステーション原典」より、ダグ・エンゲルハートの論文「知識増大ワークショップ」から引用
コンピュータの価値における、一つの回答ではないでしょうか。
ただ、コンピュータといっても、PWS(パーソナルワークステーション)の価値かもしれません。
ふつう、PWSは「P+WS」です。つまり、パーソナルなワークステーションとします。エンゲルハートは、これを「PW+S」ともします。パーソナルワーク(個人的な仕事)をこなすステーションという意味です。
この言い換えにより、PWSはコンピュータの一類型を示す言葉から、「場」を示す言葉に展開しています。
先の引用では、「コンソールの前の人々がみな同じコンピュータ複合体につながっていて、同時に協力して作業できたら」というくだりがあり、これもコンピュータが「場」を作り出すことを示しています。
最近、パーソナルコンピュータの性能が著しく向上したことで、ワークステーションは絶滅したと思います(同書の別の論文で、2005年頃にはそうなると予想されていた!)が、ここで言われていることは、そのままパーソナルコンピュータに通じます。
そして、現在、パーソナルコンピュータは、インターネットという「同じコンピュータ複合体」につながっています。
「同時に協力して作業」によって、全体の知識増大を図るわけですが、それは「群衆の英知」として、またWeb2.0で脚光を浴びるようになりました。
(マーケティング用語ではない)現象としてのWeb2.0は、コンピュータの本質的な価値の1つを発揮するものとして、正常に進化した結果なのかもしれません。