コンピュータの価値、SIer、アーキテクト…

この4月から、突如としてコンピュータの価値を考え始めました。社会人になって=SIerに勤めて7年目ともなると、今までやって来たこと(コンピュータ)の根源的価値を考え、自分の方向性についても、考えてみたくなるものなのでしょう。たまたま出会った「一所懸命」という言葉に、強くインスパイアされたのでもあります。
あれから2ヶ月が経過しようとしている今、総括的に見てみようと思います。

コンピュータの価値、それは人間の能力を増大することにあります。高速な演算、それを応用した様々な業務処理、また、コンピュータは本質的につながるものであると思いますが、ネットワークを活用した、ある種の「場」の提供(Web 2.0ムーブメントにおける「あちら側」というのは、まさに「場」の提供といえます)。

SIerの立場で考えれば、コンピュータの価値を享受するのはSIerではなく、エンドユーザです。
SIerは、価値を具体化するための作業をプロフェッショナルとして代行するのです。コンピュータの世界には、その技術を進めていくサイエンティストが存在しますが、SIerは技術を進める担当ではありません。進んだ技術を具体的な価値に変え、契約先のエンドユーザに提供するのが仕事です。

具体的な価値をエンドユーザに提供するフロントエンドとなるのは、何らかのコンピュータシステムです。それは顧客業務と技術の接点で産み落とされます。
アーキテクトは、こうしたSIerの作業を技術側の先頭に立って誘導していくのです。

大局的に見れば、進みゆく技術は、古いものから順番にコモディティ化していきます。
コモディティ化とは、例えばソフトウェアパッケージとして市販されるようになったり、今後はWebサービスだとか、最近の流行言葉で言えばSaaS(Software as a Service)として供給されるようになるでしょう。コンピュータシステムに当然に不可欠であるハードウェアリソースは、いずれグリッドコンピューティングが進展し、電気やガスのようなインフラとして扱われるようになるかも知れません。

そうなった時、コモディティ分野においては、SIerは活躍の場を失います。例えば、今さらオフィススイートで出来るようなことを作りはしないのです。
余程の大企業を除けば、会計業務などはパッケージですませることが多いだろうと思います。(ところで、SAPやOracle EBSといったERP製品は、カスタマイズが増えれば増えるだけ、その本源的価値を損なっているようにしか思えません。私はERPに触れたことがないので、これは戯言ですが…。)

つまり、SIerが本質的に活躍できるのは、技術が進歩して新たな価値が生み出せるようになった領域にあります。コモディティ化されるほど枯れていない技術は、オーダーメイドでやるしかないということです。(あと、コモディティ化できるほど一般的でない業務も、オーダーメイドでやるしかないでしょう。その際にアーキテクトがどういう役割を負うのか…。)
特に技術側に立ち位置をとるアーキテクトは、顧客にとっての価値に変換できそうなスレスレの線にある技術を絶えず吸収しなければなりません。
エラ呼吸のようなものです。常に新しい水を通しておかなければならない。そこから酸素を取り出して、体中に循環させてやるのです。それが止まった時、魚は死んでしまうでしょう。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。