会社を、「自分自身のことを考える」と言って、休んだ。
家でじっとしていても始まらないと思って、横浜に行った。
場所を変えて、のんびり、じっくり考えたかった。
横浜では、勝烈亭の勝烈定食で幸せな気分になってから、みなとみらいに行った。
海を見ようと思ったからだ。
みなとみらいには海がある。
しかし、その海は自然でいっぱいの海ではない。
都会然とした海だ。
でも、ぷ~んと、海の香りがした。
みなとみらい線のみなとみらい駅に降り立ってから、クイーンズスクエアのブックファーストで本を1冊買った。
「辞めてよかった!」という本だ。
ただ、ぼーっと考えるより、何かの刺激があった方が、考えは深くなると思う。
ただ、そこで、どんな本に出会うかが重要だ。
「辞めるのをやめよう」みたいな本だったら、ひょっとしたら翻意したかもしれない。
でも、手に取ったのは「辞めてよかった!」であった。
3分の1くらいを、ぷかり桟橋の近くの階段に腰掛けて、海を見ながら読んだ。
ハトがこちらに近寄ってきたりした。
名前を知らない海鳥が、海面から50センチくらいのところを、ただ、まっすぐ、もの凄いスピードで、平行に飛んで行った。
“その会社にいては自分を思うように生かせず、(おれの人生はこのままでいいのだろうか)と夜中に何度も寝返りを打つ人。”
“「もっと別の経験を与えてくれる職業をやってみたい人」”
私のことであった。
“ぜひともほんのちょっと思い切って一歩前に踏み出し、今の会社の外に飛び出してみたらどうだろう、と勧めたい。”
とのことであった。
“辞めようという決心は徐々に心を占めていくというのではなく(あまり自覚されない意識の底では、少しずつ水嵩を増しているのだろうが)、ある日ある時、突然一気に心の堤防から洪水のように溢れて心の全体を占拠してしまう。そうなってからは堤防の内側に辞めたい気持ちを戻すことはできないようだ。”
この本には、このような記述が2箇所ある。
それだけ、リアルな思いなのだろう。
そして、そのリアルは、正しく、今の自分自身にとってのリアルだと感じた。
その後、ランドマークタワーの展望台に行って、カフェで残りの3分の1、帰りの横浜線の電車の中で最後の3分の1を読みきった。
エピローグにこうある。
“自分を息苦しくしているものを、もう一度自分ですっかり棚卸してみて、捨て去ることができるものは捨て、どうしても卒業できないものは、自分でそのことを納得して選び取る。それだけでその状態からかなり脱却できるのではないだろうか。
自分が息苦しくない生き方を求めていくことは、決して自分一人のためになるだけではない。必ず周囲の人々をも息苦しくない状態に置くに違いない。私たちの感じている息苦しさの大半は、お互いの眼差しが作り合っているものなのだから。”
そして、この本のサブタイトルは、こうである。
“納得のいく人生を選ぶ”
会社を辞めよう。そう、思う。
もちろん、別の会社に入るためではない。
生活のためにバイトをすることはあるだろうが、あくまで独立するためである。
行政書士は、やりがいのあるビジネスの舞台だと感じている。
それだけ行政書士の扱う法務は、フィールドが広がり続けるし、そこで的確なサービスを提供できた者が、受け入れられる。
そこには、必ず法務サービスを必要としている人がいるはずなのだ。
単なる金儲けではないし、人助けの慈善事業でもない。
自分の仕事を必要としている人がいるから、どこにでも出向いて、もしくはネット上で、それを請け負うのである。
そういう、仕事を始めたいのである。
その舞台に上るためのパスポートが、行政書士試験に合格するということだ。