労働需要が飽和したなら…

SIerで仕事をしていると、「このシステムを作ると何人月のコスト圧縮が可能になる」という売り文句は、最上の売り文句だということが常識になります。
提案書でも、そういうことを言いたい…と、いろいろ考えるものです。
でも、そういう人手のコスト圧縮というのは、リストラを可能にする要因なわけです。
しかし、今ほど仕事のない人が多くなってくると、それもどうなのかな…と。

404 Blog Not Found:技術が上がれば労働需要が減る: “技術革新という「詰め車」がそこにあって、需要増が雇用増に直結しなくなった。
それでも雇用減にそう簡単にはならなかったのは、それをも上回る需要増があって、そこで雇用が吸収されていたからだけれども、今回の世界バブル崩壊は、今度こそ
(労働需要が飽和した特殊な場合を除いて)
が顕在化したという実感がかなりある。”

今回のバブル崩壊がその顕在化なのだと言われると、これは困ったことになったなぁ…と思うわけで、自分たちのやってきたことは正しかったのだろうか?という思いに駆られます。(実際、それほど効果の出るシステムを作ったことがあるのかい?という質問には、答えない!と一点張りする。)

まぁ、SIer自らも生産性向上だとか、再利用性の向上だとかを錦の御旗に技術を進歩させています。(だから、本当に進歩させたのかお前は?って質問には答えないって言ってるじゃん。)
だから、SIerっていう業界は、自分で自分の首を絞めている業界だとも言えるわけです。
生産性が向上すれば、その分だけ仕事がなくなるってことですから。あとは、需要次第ですよね。

実際、日本に住んでいれば、そこそこのお金さえあれば生活に困ることはありません。
いくら仕事していない人が多くても(=物を作る人が減っていても)、買う物が減るわけじゃないのです。
もちろん、それは輸入を多くしているからでもあるのだけど、長い目で見ればそれは生産性向上の賜でしょう。
その分、仕事にあぶれて生活出来なくなる人が出てくる。
ベーシックインカムみたいな議論が大真面目にされるのも、あながち間違っていないような気がします。

でも、dankogaiが言うように、本当に今回のバブル崩壊が労働需要飽和の顕在化だとしたら、これからの世の中は何が起こるのでしょうか。これから景気が良くなっても仕事が増えるわけじゃないってことでしょ?
5年後、10年後…、私が今年で30歳だから、その私が60歳くらいになる時は?

日々の生活の中だけにいると、今、目の前で起きているようなことが、10年後も20年後もずっと、自分が死ぬまで続くだろう…そんな風に思いがちです。未来のことも、今を基準に考えてしまいがちです。(それは未来が分からない以上、やむを得ない側面もある。)
しかし、きっとそんなことはない。日本だけを見ても、人口は減っていく、高齢者の割合がどんどん増える、経済は成長しない。環境汚染による影響が生活の上でも出てくる。
ぱっと思いついただけでも、これくらいのことが挙がるのに、今と同じ社会が今後何十年も続くなんていうのは、ファンタジーです。

野生動物のように、しぶとく生き残る道をその場その場で選択していくしかないのでしょう。
「それが楽しい」と思えるくらいの人になった方が良さそうですね。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。